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早稲田と慶應にトップ高校出身者が行かなくなった理由…「早慶より地方の国公立」が鮮明に

構成=編集部

地方のトップ高校の“早慶離れ”が加速

――出身校の傾向に変化はありますか。

オバタ いわゆる本当のトップ校の学生は、早慶に進学しなくなっていると言えます。特に、早稲田に関しては出身校の私立B級感が否めません。関東の御三家(開成、麻布、武蔵)に代表されるようなトップ校では国立志向が強まっており、特に東京大学、一橋大学、東京工業大学、京都大学、医学部に進学するのが「勝ち組」です。一方で、女子に関しては、「何がなんでも東大」という学生が昔に比べて増えているとはいえ、そこまで多くないので早慶に行く子もけっこういます。

――早慶とも「首都圏出身者ばかりになっている」とも言われています。

オバタ 現役志向の高まりや経済的な問題から、地方の優秀層が地元の国公立に進学するケースが増えているようです。特に、慶應で地方出身者が減っているのは明らかです。本来であれば早慶に来ていた優秀な学生が地方にいるということで、あるインフラ系大企業の人事担当者は「知名度の低い地元国公立大でもびっくりするほど優秀な学生がいて、伸びしろとしては早慶生よりも感じる」と打ち明けてくれました。実際に、地方での採用活動に力を入れている企業も増えています。

 もちろん早慶も気づいていて、2000年代からはタッグを組んで「早慶合同説明会」を地方で開催しています。地方出身者のみが受けられる奨学金「めざせ!都の西北奨学金」(早稲田)、「学問のすゝめ奨学金」(慶應)を用意したり、指定校推薦の地方への割り振りや地域ブロック単位のAO入試などを取り入れたりしています。

 また、現役志向の高まりにともなって、予備校業界では現役受験に強い「東進ハイスクール」がずいぶん躍進しました。公立トップ校には、まだ「浪人しても仕方ない」という空気がありますが、私立校では現役志向が非常に強い。我々の頃とは比べものにならないほど、浪人へのハードルは高いようです。

早慶と東大・一橋大との差が拡大

――オバタさんといえば、20年にわたって『大学図鑑!』シリーズ(ダイヤモンド社)の監修を務めていらっしゃいます。大学全体のポジショニングの中で、早慶の立ち位置に変化はあるのでしょうか。

オバタ この30年間で基本的には変わっていないのですが、東大や京大、一橋大、東工大との差は広がっている気がします。また、近年は私立の医学部も超難関国立大の東大や一橋大と並ぶトップ層に位置付けられるようになりました。昔は、医学部でも本当に優秀なのは国公立と慶應ぐらいで、医学部御三家(慶應、日本医科大、慈恵医大)とも言われましたが、今は下位層の、たとえば帝京大医学部でさえ早慶の理工学部レベルの偏差値がないと入れなくなっています。

 早慶と並ぶ大学として、上智やICU(国際基督教大学)がありますが、今は入試難易度が少し落ちているようです。最近では「早慶上理」という呼ばれ方も出てきており、理系志向の高まりで東京理科大も難関私大扱いされています。また、MARCHの中でも、立教の異文化コミュニケーション学部、法政のグローバル教養学部なども早慶に匹敵する偏差値となっており、大学業界では「成功した新設学部」と言われています。

――ありがとうございました。

 後編では、早慶の学生気質の変化や就職事情、大学業界の課題などについて、さらにオバタ氏の話をお伝えする。
(構成=編集部)

『早稲田と慶應の研究』 「早稲田の政経、慶應の経済」と言われたのは昔の話。私学の両雄に今、大きな変化が起きている。バンカラを知らない早大生。ファッション誌の登場回数でワセジョに抜かれた慶應女子。偏差値、志望者数、早慶ダブル合格の際の進学先。司法試験などの難関試験対決にも異変あり。政財界のOB・OG人脈など、卒業後にも及ぶ早慶戦の“昔と今”を、さまざまな角度から取り上げる。早慶OB&受験生の親必見の目からウロコの新・早慶研究本。 amazon_associate_logo.jpg

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