北海道南西部地方を震源として6日午前3時8分頃に発生した「平成30年北海道胆振(いぶり)東部地震」。最大震度7の揺れを観測し、死亡者は41人に上り(12日現在)、道内ほぼ全域の約295万戸が停電するなど大きな被害が発生した。
今回の地震発生の2日前に異常を検出していたという電気通信大学名誉教授で早川地震電磁気研究所代表の早川正士氏に、話を聞いた。
――地震予知学について教えてください。
早川正士氏(以下、早川) 数百年から千年単位の長期予測と、数十年単位の中期予測は、過去の地震データなどに基づきマグニチュードなどを導き出すものです。たとえば、ここ30年で東京でマグニチュード7の地震の発生確率は7割といわれます。しかし、明日起きるともいえませんし、20年たっても起きないかもしれません。これが従来の地震学です。これに対して地震予知学は、より近い将来の地震を予知するものです。
――どのように予知するのでしょうか。
早川 電波を観測することで前兆現象を検知します。大気中の電離層という高度100キロで電波を反射する層が、地震に対してもっとも敏感であることがわかってきました。1995年1月17日の阪神・淡路大震災では、発生前から電波に顕著な異常が出ていたことを発見していました。地震発生前に観測される電波の異常を見つけ出していくのです。今や電離層の乱れをVLF(波長10~100km、周波数 3~30kHzの超長波)で検知し、地震を予知することは世界の潮流です。
――北海道地震前には前兆現象はありましたか。
早川 早川地震電磁気研究所は国内11カ所に観測点を持ち、毎日モニターしています。北海道の稚内にも観測点を置いています。地震予知には、宮崎県にある海上自衛隊えびの送信所と、福島のおおたかどや山標準電波送信所の電波を活用しますが、今回の地震発生の2日前には、稚内観測点での電波異常が浮かびました。これらの地点の位置関係を考えると、中間地域である北海道南西部で地震が発生する可能性が高く、9月4日には明瞭かつ強い電離層の乱れが観測されていました。統計上、異常の検知から1週間後に地震が発生することが多いのですが、今回は2日後に発生したため事前に発表できなかったのが残念です。
――次に地震が起こる可能性のあるエリアは、どこでしょうか。
早川 広島か西四国にかけて、気になるエリアがありますが、観測点が少ないので正確に指摘することはできません。もし、観測点がさらに増えれば、AI(人工知能)やビッグデータも活用して、さらに精度が上がります。
――近いうちに首都圏で地震が発生する可能性はありますか。
早川 私どもは1週間先の地震しか予知できません。現時点(12日)では予兆はありませんが、千葉と茨城では小さな地震が発生する可能性があります。大きな地震が予知されている場合、地下鉄の利用は避けたほうがよいです。地下鉄には水も火も襲うので、非常に危険です。
北海道の地震は海溝型が多いのですが、今回は内陸直下型でした。2016年に発生した熊本地震も、内陸直下型が起こる中期予想確率が1%であったにもかかわらず起きました。東京も周期的にみれば、大規模な地震はいつ来て起きても不思議ではない状況なので、防災について家族で話すべきです。
(構成=長井雄一朗/ライター)