北海道南西部地方を震源として6日午前3時8分頃に発生した「平成30年北海道胆振(いぶり)東部地震」。最大震度7の揺れを観測し、6日20時30分現在、死亡者は9人、安否不明者は31人に上るなど被害が拡大している。
今回の地震被害の特徴としてあげられるのは、道内ほぼ全域の約295万戸が停電した点だ。大手電力会社でのほぼ全域での停電は国内初であり、6日午後4時現在、まだ28市町村の約33万戸しか復旧していない。
停電の大きな原因は、道内最大の火力発電所、苫東厚真発電所が停止したことだ。泊原子力発電所が運転停止中のなか、苫東厚真発電所は地震発生当時、道内の使用電力の約半分を供給していた。同発電所はボイラー設備などに損傷が見つかっており、道全域の電力復旧には1週間以上かかるとみられている。
北海道電力によれば、電力の需要量と供給量のバランスが崩れると周波数が一定にならず、電気機器や発電機の故障を引き起こす恐れがあるほか、停電を起こす可能もあるという。そのため、苫東厚真発電所が突然停止したことで電力網への電力供給量が一気に下がり、道内の各発電所が次々と停止する事態が生じた。電気工学が専門の大学教授は匿名を条件で、次のように語る。
「近年、国内でこれほど広範囲でのブラックアウトは珍しいです。予測不能な自然災害によるものなので仕方のない面もありますが、やはり北海道という広い地域において供給量の半分を苫東厚真発電所1カ所に依存するリスクが露呈したといえます。2012年に泊原発が運転停止した後、今回のような事態が十分に想定可能ななかで、そうした危うい電力供給体制を放置してきた北電の責任は大きいです。
また、北海道と本州の間で電力を融通するための送電線『北本連系線』がありますが、今回、本州側から受け取る直流を交流に変換する交流電力を調達できなくなり、せっかく非常時のために備えられている北本連系線がすぐに使えなかった。使えるようになっても、容量は最大60万キロワットで、道内の電力不足をカバーするには大きく不足しています。果たして北電は、泊原発停止を受けて、いざという事態に備えて本州から大量の電力融通を受けられるような施策に本気で取り組んでいたのか、疑問を感じます。
さらにいえば、そもそも論になってしまいますが、現在泊原発が運転停止中なのは、建屋の直下に断層があり、原子力規制委員会の審査が続いているためですが、そのような場所に原発を建設してしまったツケが今、回ってきているともいえます。
このように一つひとつを見てみれば、たとえ自然災害によるものではありますが、今回の全域停電は北電による非常時への不備、人災といえるのではないでしょうか」
北電は地震で停止した火力発電所や水力発電所の再稼働を進め、本州からの電力融通分などを合わせ、7日中に約300万キロワットの電力供給を行う予定としている(需要ピークは地震前日の5日は380万キロワット)。また、経産省の要請を受け、東京電力や東北電力などの電力各社は、電源車など約150台や作業員を北海道に派遣する。
(文=編集部)