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木村貴「経済で読み解く日本史」

福岡市、若者増加で活況の秘密は、2000年前の朝鮮との自由貿易

文=木村貴/経済ジャーナリスト
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 一大率は、邪馬台国が中国・三国時代の強国のひとつ、魏との外交を独占する役割も担ったが、交易は独占しなかった。邪馬台国が中国の皇帝との間に行う朝貢交易が、絹製品など贅沢品を中心とする限定された数年間隔の交易だったとすれば、倭韓交易は鉄や穀物が盛んに取引されたようだ。政府が規制や関税で民間の貿易を制限する現代より、自由だったといえる。

グローバルが社会を活気づける

 さて、以上述べてきた約2000年も前の北部九州の姿から、現代に通用する教訓をいくつか導くことができる。

 まず、経済のグローバル化は地方を衰退させず、むしろ元気にするということだ。これは現在の福岡に当てはまるだけではない。島根県古代文化センター主任研究員の吉松大志氏によれば、卑弥呼前後の時代、山陰地方も日本海を介した一大交易拠点だったという(『古代史講義-邪馬台国から平安時代まで』)。これからの山陰地方も福岡同様、朝鮮半島やロシア沿岸部との近さを生かし、活力ある経済を築く可能性がある。

 次に、活力ある都市を生み出すのは政治の力ではなく、自由な経済活動ということだ。邪馬台国が近畿にあったとすれば、博多湾は当時の政治の中枢から遠く離れていたことになるが、それにもかかわらず、いやそれだからこそ、沿岸に活気ある都市が生まれた。

 ジャーナリストの牧野洋氏は著書『福岡はすごい』で、アップル、グーグル、マイクロソフトなど大手IT(情報技術)企業が本社を置き、米国全体の成長エンジンとなっている米国西海岸と福岡の共通点のひとつとして「政治・経済中枢機構から離れている」ことを挙げる。権威主義的な中枢から離れているからこそ、既成観念にとらわれない自由な発想ができるともいえるだろう。

 最後に、人のグローバル化も社会を活気づけるということだ。古代の日本列島は、中国大陸や朝鮮半島からやって来た人々によって新たな文化を育んだ。アジア系を中心に多くの外国人が訪れる現在の福岡も、未来の日本文化の発信地になるかもしれない。

 ただし人のグローバル化は、あくまでもビジネスや留学、旅行など受け入れ側の合意に基づくものでなければならない。政府が受け入れを強制すれば、むしろ社会に混乱と反発をもたらすのは、欧州連合(EU)の移民・難民政策を見れば明らかだ。
(文=木村貴/経済ジャーナリスト)

<参考文献>
田中史生『国際交易の古代列島』角川選書
岡田英弘『倭国——東アジア世界の中で』中公新書
佐藤信編『古代史講義——邪馬台国から平安時代まで』ちくま新書
牧野洋『福岡はすごい』イースト新書

木村 貴/経済ジャーナリスト

木村 貴/経済ジャーナリスト

経済ジャーナリスト。1964年熊本生まれ、一橋大学法学部卒業。大手新聞社で証券・金融・国際経済の記者として活躍。欧州で支局長を経験。勤務のかたわら、欧米の自由主義的な経済学を学ぶ。現在は記者職を離れ、経済を中心テーマに個人で著作活動を行う。

Twitter:@libertypressjp

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