中国のインターネット大手、テンセント(騰訊控股)が、ニッポンのゲームバブル崩壊の引き金を引くことになりそうだ。
カプコンのゲームソフト『モンスターハンター:ワールド(モンハン)』の中国版が8月8日、現地のゲームプラットフォームWeGameで発売された。ところが、中国当局の命令を受けて、販売わずか5日で配信停止となった。
モンハンは今年1月に発売され、8月に累計販売本数は1000万本を達成した。単一ソフトの1000万本突破はカプコンでは初めて。
WeGameはテンセント・ホールディングスが昨年9月に始めたゲーム配信サービスだ。モンハンの配信停止が発表されて以降、テンセントの株価の下落が続いた。8月15日に発表した2018年4~6月期決算は、四半期ベースで13年ぶりの減益だった。急成長にストップがかかったことから、株価の下落に拍車がかかった。
テンセントの時価総額は、17年11月20日に中国企業として初めて5000億ドル(約56兆円)を突破。21日には5300億ドルとなり、米フェイスブック(約5200億ドル)を上回った。勢いは止まらず、18年1月に6100億ドルまで上昇した。
しかし、モンハンの配信停止と四半期決算の減益のダブルパンチで株価は急落。9月5日時点の時価総額は4000億ドル。2100億ドル(約2.3兆円)分が吹き飛んだことになる。文字通り“テンセント・ショック”である。
テンセントの業績悪化は稼ぎ頭のスマートフォン(スマホ)向けゲーム事業が減速したことによる。テンセントは中国共産党の機関紙などから「ゲーム中毒を生み出している」と批判を受け、昨年7月から主力のスマホ向けゲーム『王者栄耀』で未成年のプレー時間の制限を始めていた。モンハンの配信停止も、中国当局の規制強化の一環だ。国の内外から「テンセントは終わった」といった声があがっている。
17年時点で、中国のゲーム市場は日本の約2倍の約3兆4000億円とされている。この10年で20倍近くに急拡大した。
株価が急落したのはカプコンだけではない。中国の売り上げ比率が4割を超えるネクソンの株価も軟調(年初来高値は2月27日の2005円、同安値は8月15日の1250円)だ。
「ガチャ」批判強まる
ゲーム業界の逆風は、中国から吹き付けてくるだけではない。
世界保健機関(WHO)は6月18日、オンラインゲームやテレビゲームのやり過ぎによって日常生活が困難になる「ゲーム障害」を新しい疾病として認定。依存症のひとつとして「国際疾病分類」の最新版に加えた。スマホやタブレット端末の普及に伴いゲーム依存が広がり、日本など世界各国で問題になっていることが背景にある。
WHOは「ゲームをしている人の2~3%がゲーム障害とみられる」と指摘した。