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前回記事『参院選の目玉・ブラック企業政策、各党の政策を検証~企業名公表、取り締まり強化…』では、本日(7月21日)に投開票される参議院議員選挙における、各党のブラック企業対策に関する政策(ブラック企業政策)について解説したが、今回はブラック企業政策以外の各党の雇用政策を検証してみたい。特に今年は、雇用改革が経済財政諮問会議、規制改革会議、産業競争力会議などで相次いで議論されている。中心的な話題は解雇規制の緩和、労働時間改革、派遣規制緩和である。
具体的には、解雇規制を緩和し、金銭解決制度の導入や「解雇原則自由」であることを労働法に書き込むことなどが提案されていた。
また、労働時間改革については、裁量労働制の規制緩和や、管理監督者の要件緩和、「ホワイトカラーエグゼンプション」の導入などを提案していた。これらは総じて「労働時間と賃金」の関係を切り離すことを企図する政策であり、「一定金額」を支払うことで、社員を無限に働かせることを可能にする制度設計になっている。「過労死促進法」と呼ばれるゆえんである。
さらに、派遣法についても規制を緩和し、非正規雇用の活用を促進することが求められていた。
これらの議論を踏まえ、各政党はどのような「雇用政策」を提案しているのだろうか。今回は、審議会で主に取り扱われた、労働時間改革と解雇規制緩和、非正規雇用対策を中心に整理・検証したい。
(1)労働時間改革:民主、みんな、共産、社民
・労働時間規制緩和反対:民主、共産、社民
労働時間改革からみていこう。冒頭に述べたように、政府は、裁量労働、管理監督者、ホワイトカラーイグゼンプションの導入を目指していた。
裁量労働制とは、裁量性の高い業務に就く社員にたいして、一定の労働時間働いたものと「みなす」制度である。だが、これは長時間労働の温床となる恐れがあるために、適用の要件に、労使委員会による議決や、労働者の健康へと配慮する措置などが求められている。
しかし、政府の審議会では、現行制度における労使委員会による5分の4以上の賛成や、対象者の健康状態を半年に一度労働基準監督署に報告する義務の撤廃を求めていた。もし、労働時間の管理が経営者の義務でなくなれば、過労死するような長時間労働が、社員の自己責任になってしまう恐れがある。
また、ホワイトカラーエグゼンプションは、実際に働いた労働時間に応じた賃金の支払いや、割増賃金の支払いをなくす制度である。
自民党は、政府の審議会で提案されている、これらの制度をすべてマニフェストに盛り込まなかった。その意図が、「本音を隠すため」なのか、審議会の方針は撤回するつもりなのかは不明である。
一方、これらの政策に対して、明確に反対を掲げている政党も多数現れている(表1)。社共に加え、連合を母体とする民主党が明確に反対しているのが目につく。だが、他の政党がすべて賛成であるのかは、マニフェストからはうかがうことができない。各候補者に、審議会に対する見解をただすことが必要だろう。
・サービス残業対策:みんな、共産、社民
また、長時間労働の対策として、残業代の割増率引き上げを掲げる政党も多い(表1)。より強力に、サービス残業根絶法を制定して企業名公表や不払い残業代の支払いを2倍にするという政策も登場した。