先日亡くなられた関東連合元幹部で作家の工藤明男さんを偲び、生前、同氏と親交が深く、亡くなる直前までやりとりをしていた作家の沖田臥竜氏に、追悼の意を込めて、今の思いを綴ってもらった――(【第1回』『第2回』『第3回』はこちら)。
最高にタフだった男の最期
こんなにも、毎晩浴びるほど酒を飲むのは初めてかもしれない。どれだけ飲んでも酔えないし、眠れない日々が続く。それが、友人の死に接するということなのだろう。ただ彼、工藤明男について思うことがある。もう誰に警戒することも感情を熱くさせることもない。これまで積み上げてきた重荷を肩から下ろして、楽にしてほしいと。もうゆっくりしてほしいと……。
彼はどこで会っても、周囲に対して警戒心を働かせていた。ただ、精神力が強かったので、それを口に出すようなことは意地でもしなかった。
私は、どこにいても何をしていても変わらない。それは今も昔もだ。言いたいことを言うし、感情的になれば我慢がきかない。しかし、その是非を考えないようにしている。正しいと思っていることを正しいと言えず、窮屈に暮らしていくくらいなら、自分の信念や感情に正直に生き、それで後悔するほうがまだマシだと考えている。
それでも私は彼のようにタフではない。内心はいつも自問自答を繰り返していた。私の生き方は本当に正しいのかと考えていた。だが、彼は私に教えてくれた。最期の最期に、そんな私を頼ってくれたのだ。
私の生き方が正しいか正しくないかなんてわからない。だけど、たった1人でも死に直面した状況で頼ろうとしてくれたのが私だったのだ。迷いはこの先も続くだろう。だけど、私は私のままで、決して妥協せずに生きていこうという思いを新たにしたのだった。
「このまま突っ走ってください!」
彼がいつも私に言ってくれていた言葉だ。
彼はもともとタバコも吸わないし、食生活においても神経質なくらい気を配っていた。そんな彼に尋ねたことがあった。何をしている時が、今一番楽しいのかと。多分2年くらい前だったと思う。
「朝、ジムに行ってからスーパーに行き、刺身を買って1人で食べることですかね」
そう言うと悪戯っ子のように、はにかんでみせた。そして、お互いに禁酒している時に、「もし酒を飲めるなら、どんなシチュエーションが一番いいか」という雑談したこともあった。
「一つは、行きつけの寿司屋で昼間から寿司をつまみに日本酒を延々飲むこと。それから昼間からバーベキューでなんでもいいから酒を飲み続けること。三つ目は部屋の中で好きなことをしながら、ウイスキーを飲むこと。この3パターンをやりたいですね〜」
こう語るときも、彼は悪戯っ子ようにはにかむのだった。
世間の彼に対する評価はわからない。毀誉褒貶あるだろう。少なくとも私は、そんなものに興味がなかった。私に見せる表情、そして言葉がすべてであった。どれだけ時代が変わっても、人間関係の根幹とはそういうものではないだろうか。
そんな彼が数カ月前からTwitterへの投稿を頻繁にし始めた。その中には、攻撃的とも思えるものも少なくなかった。
彼は「客観的に見ていて、どう思われますか?」と、私や我々の友人である猫組長に意見を求めることもあった。私なんかよりも考えがずっと大人の猫組長は「あんまり熱を入れないんでいいんじゃない〜」というスタンスだった。
私は私で、そもそもSNSに対する嫌悪感があり、自分であろうが、他人であろうが、そこでの言動に重心を置いていない。だからSNSなんて、そこまで気にすることはないんじゃないかとスタンスだった。それでも、彼の投稿については、猫組長と2人で心配はしていた。そこから読み取れる、彼の心の変化をだ。少なくともそれまでの彼の性格から考えて、建設的ではないことに力を入れるタイプではなかった。
以前は「ネットなんて全く興味がないですね〜」と口にしていたくらいだった彼が、Twitterを通して、意見を発信したり、議論したりすることに熱を上げるようになっていた。彼の中で、精神的にさまざまな変化があったのだろう。だが、彼に変化に及ぼした要因がなんだったのかは、最期までわからなかった。
最近では、私も連続ドラマの原作を務めた影響で、いろいろなところで取り上げられたり、連絡が来たりするようになった。ただ私は何も変わらない。ここまで来たのだ。私は人の顔色を見て何かを変えたり、困難に直面しても心を折られたりしない。こんな自分だからこそ慕ってくれた彼のためにも――と大それたことを言える人間ではないが、彼というタフな友がいたことを私は忘れない。
随分と寒くなってきた。今年の冬は冷え込みそうだ……。
――もうクリスマスに正月やって。一年てほんまにあっという間やでな。兄弟にも知らせてきたよ。強い男やから、ずっと涙を堪えてこぼさんかった。
オレはこんなんやん。でも人前では絶対に泣かんて決めてるから、泣かへんかったけど、1人になったら子供みたいにわんわん泣いてもうたでな。
見上げたら、あなたがいるといつも思っています。どうか安らかに。
友へ。
沖田臥竜 拝――
(文=沖田臥竜/作家)