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「破産者マップ」は違法…高圧的な削除申請手順に「消してほしかったらカネ払え」の匂い

文=編集部
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「破産者マップ」は違法…高圧的な削除申請手順に「消してほしかったらカネ払え」の匂いの画像1「破産者マップ」より(現在は閉鎖)

 過去に破産した人の情報をグーグルマップ上で可視化した「破産者マップ」が大きな話題となっていたが3月19日、マップが閉鎖された。

 運営者はツイッター上で、「官報から取得した破産者の情報を削除すること」「削除申請フォームのデータを削除すること」「削除申請の際の本人確認書類を削除すること」「ドメインについては、今後、類似サイトが出る恐れがあるため、一定期間保持すること」を表明している。

 破産者マップについて、さまざまなメディアが同マップの適法性などを検討するニュースを掲載し、情報を掲載された人を中心に対策弁護団も結成されていた。

 マップの閉鎖に当たり運営者は、「多くの方にご迷惑をおかけし申し訳ございませんでした」と謝罪しつつ、「誰もが自由にアクセスでき、公開されている破産者の情報の表現方法を変えるだけで、これほど多くの反応があるとは思わなかったのが正直なところです。国や自治体が持っているデータ、公表しているデータの表現方法を変えれば、そのデータの持っている本質的な価値に近づけるのではと思います」などと、作成意図などを説明した。

 閉鎖されたとはいえ、インターネット上を中心に、破産者マップをめぐって大きな議論が巻き起こっている。

 特に、「官報に公示されているとはいえ、個人情報をネット上に公開することに問題はないのか」「破産手続きのために公示された情報を、誰もが目に触れるかたちで公開すると、病気や被災などでやむを得ず破産した人々の再起を阻害するのではないか」などと疑問視する声が多い。

 さらに、情報の削除申請の受付方法についても批判があがっていた。削除申請フォームに「削除を希望する理由や事情・経緯」「破産に至った事情」を書き込ませる項目があり、加えて本人確認書類の送付を求めていることが問題視されていた。

 この破産者マップについて、弁護士ごとに見解がわずかに分かれているようなので、Business Journal編集部でも2人の弁護士に話を聞いた。

馬場貞幸弁護士の見解

 法律事務所エイチームの馬場貞幸弁護士は、違法となる可能性があると指摘する。

「破産者マップの件は、(1)名誉権の侵害(名誉棄損)により違法ではないか、(2)プライバシー権の侵害にあたり違法ではないか、(3)個人情報保護法に反し違法ではないか、という3点がまず問題になると考えています。

(1)と(2)については、確かに、破産者の情報は官報にすでに載っており公知、かつ一定の公共性がある情報ではあります。しかし、公知性と公共性は、たとえばメディアに取り上げられた重大犯罪に関する情報等と比べれば、はるかに薄いといえますし、何より特に地方に住んでおり引越し等が容易ではない破産者にとっては、社会生活上又は私生活上の受忍限度を超える重大な支障が直ちに生じる事案として、違法といえるのではないかと考えています。

(3)については、すでに公開されている官報から個人情報を取ってくることが個人情報の取得にあたるのかとか、それを可視化してインターネットユーザーによりアクセスしやすくすることが第三者提供にあたるのか、すなわちただちに個人情報保護法の適用があるのかといった多様な問題があります。

 ただ、最大の問題点と考えられるのは、削除を希望する者は削除申請フォームから申請できれば対応するという仕組みを設けているところ、当該フォームに入力すべき情報が極めて詳細、かつ破産に至った経緯など申請に不要と考えられる情報も含まれていることです。 いわゆる『オプトアウト』と呼ばれる仕組みを導入しており、一見すれば個人情報にも配慮しているようにみえて、邪推ではありますが、このフォームに記入された情報が新たな個人情報として悪用される危険性があるのではないか、という点が非常に気になります」(馬場弁護士)

山岸純弁護士の見解

 弁護士法人ALG&Associates執行役員の山岸純弁護士は、破産者マップは違法だと断言する。

「勝手に他人の破産情報をインターネット上に掲載した場合、名誉毀損を理由とする民事上の不法行為責任(民法709条)を負う可能性があります。この場合、数十万円から百数十万円の損害賠償義務を負うことになります。

 これに対し、官報に掲載され、公の情報として知られているのであれば、名誉毀損には該当しないという意見もあるかもしれません。しかし、名誉毀損は、『真実』を広めた場合であっても成立することがあるのです。

 もっとも、その事実の公表が、公益目的があり、かつ公共性がある場合には、この表現の違法性が阻却されると考えられています。この場合、不法行為責任も、刑法上の名誉毀損罪(刑法230条)も成立しません。

 今回の『破産者マップ』ですが、『破産した』という事実は、たとえ真実であったとしても、その方がどこに住んでいるという表現は、はたして公益目的や公共性があるでしょうか。

 政治家や有名な経営者であれば別ですが、一般人が破産したという情報に公共性があるとは思えません。さらに、『この一般人は破産しています』と公表することに公益性があるとは到底思えません。

 結局、『消してほしかったら、カネ払え』などという“匂い”がしてきます。というわけで、これはアウトです」(山岸弁護士)

 このように、一度は官報に掲載されて国民の誰もが知り得る情報となったとはいえ、個人情報をネット上で公開することは違法となる可能性が高いといえるだろう。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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