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六代目山口組、神戸山口組が危機感募らせる改正通信傍受法…当局に狙われるヤクザの対策は?

文=沖田臥竜/作家
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六代目山口組、神戸山口組が危機感募らせる改正通信傍受法…当局に狙われるヤクザの対策は?の画像1警察の家宅捜索を受ける六代目山口組本部

 現在、六代目山口組の分裂騒動とは別に、六代目山口組、神戸山口組の両組織が、その対策方法に苦慮している案件がある。それは6月1日から施行される改正通信傍受法だ。通信傍受法とは平たくいえば、組織的関与が疑われる犯罪捜査のために、当局が証拠入手の手段として、電話やメールなどを合法的に傍受できるようにするものだが、その適応範囲が広がるのだ。

 殺人や傷害・傷害致死、詐欺・恐喝、児童買春・ポルノなどといった犯罪もその対象となる今回の改正を受けて、当局は組織犯罪の撲滅に、より一層の力を入れる方針だといわれており、山口組のみならず、ヤクザ業界全体に影響を与えることになるとみられている。

「現法の通信傍受法では、NTTなどの事業者の立会いのもと、特定の事業所まで捜査員が出向いて傍受しなければなりませんでした。それも録音しておくことができず、あくまでリアルタイムでの傍受と定められていたのです。それが改正後からは、事業者の立会いも不要で、録音も可能になります」(法律に詳しい専門家)

 また傍受するために使用する専門機器も、今後は管区警察局などで保管されることとなるので、裁判所からの令状が下りれば、警察本部での傍受が可能となるのだ。そのため、傍受に対する捜査当局の対応が迅速化されるというわけである。

「今回、六代目山口組ではブロックごとに改正通信傍受法についての解説記事が配られたといわれており、それを配下の組員らに読ませるようにしている組織もあるようだ。神戸山口組でも、携帯電話の盗聴には気をつけるように注意喚起していると聞く」(業界関係者)

 ただある幹部は、携帯電話の傍受についてこのような見解を示している。

「以前から、当局による携帯電話の盗聴については口酸っぱく指導されてきた。重要な話は公衆電話からかけるようにしろとか、海外に通信を飛ばし回線を掴めない会話のアプリを使用するようにとか、その都度、対策が練られている。ただ今回の改正で重要なのは、当局による傍受がどこまで当たり前となるのかといった範囲の問題ではないか。現在、当局は狙ったヤクザに対してはどんな微罪を適用してでも逮捕しようとする時代。犯罪行為を裏付ける会話についてのみならず、常に傍受される危険があるという意識で、日常的な会話でさえ、不用意なことを言わないよう気をつけなければならなくなってきている」

 筆者が現役時代から、確かに当局による傍受については警戒するように注意されてきた。会話中に電波が途切れたりすれば、「盗聴されているのではないか?」と相手方と言い合うことも少なくなかった。ただ現実には携帯電話が傍受され、それが逮捕のきっかけとなったり、裁判で証拠として提出されたりという話を聞いたことはなかった。通話履歴を洗い出され、記録に残された会話時間などから犯罪行為を推認されることはあったようだが、それはあくまで状況証拠のひとつでしかなかったのだ。

 そのため、通信傍受法が施行されてからも、必要以上に携帯電話の会話に神経質になることはなかったのが現実だったといえるだろう。しかし今回の改正に乗じて、当局がこれまで以上にヤクザ社会への監視を強める可能性があるのだ。

「一般社会はもちろん、ヤクザ社会ですら、重要なやりとりを携帯電話やメールに頼りすぎている傾向にあります。そこからどうシッポを握られたり、揚げ足を取られたりするかわからない。今後は手間暇をかけてでも、かつてのように直接会って話すようにということが徹底されていくのではないでしょうか」(ジャーナリスト)

 ただでさえヤクザに対する厳罰化、特に山口組への締め付けが進んでいるなかで、今回の改正通信傍受法の施行により、六代目山口組、神戸山口組両陣営の危機感はさらに高まっている。

(文=沖田臥竜/作家)

●沖田臥竜(おきた・がりょう)
2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、『山口組分裂「六神抗」』365日の全内幕』(宝島社)などに寄稿。以降、テレビ、雑誌などで、山口組関連や反社会的勢力が関係したニュースなどのコメンテーターとして解説することも多い。著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任侠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)など。最新刊は、元山口組顧問弁護士・山之内幸夫氏との共著『山口組の「光と影」』(サイゾー)。

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