「この芸者殺し野郎」とハマコーに罵倒された小泉純一郎…政治家と花街の闇
国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。
京都の「元舞妓」の女性が「花街の闇」をツイッターで告発したことが話題ですね。
「この世から抹消されるかもしれんけど、これが舞妓の実態。当時16歳で浴びるほどのお酒を飲ませられ、お客さんとお風呂入りという名の混浴を強いられた(全力で逃げたけど)。これが本当に伝統文化なのか今一度かんがえていただきたい」
この衝撃的なツイートは6月26日から始まっていて、所属していた置屋が「5000万円で初めての性行為を売ろうとした」と明かし、「人身売買を国が認めている」と問題提起したのです。神澤は、こういうのは昔の話だと思っていましたから、大変驚きました。
この一連のツイートに対しては、「やっぱり」「ひどい」という意見だけではなく、「この話はウソだ」という指摘もあり、まだまだ波紋は広がりそうです。
この事態を受けて、厚生労働省の後藤茂之大臣が記者会見でコメントしていますね。後藤大臣は「個別の事案は答えにくい」とした上で、「芸妓や舞妓の方々が適切な環境の下で、芸妓や舞妓としてご活動いただくことが重要であると考えております」と答えています。
「事実なら問題」「調査する」とかにはならないんですね。でも、ツイッターから大きくなった問題が大臣の公式会見で取り上げられるのは、異例といっていいと思います。
超過酷な少女たちの舞妓生活
そもそも、「舞妓さん」という存在は京都だけのようで、住むところと食事、お稽古の費用は所属する置屋が持つので、お給料はナシだそうです。舞妓さんなどの伝統を守り、募集や派遣もしている公益財団法人京都伝統伎芸振興財団の公式サイトによると、午前8~10時頃に起床し、1日にフリーの時間は2時間程度。寝るのは午前1時を過ぎることもよくあるそうです。
今回の騒動で同財団にも取材が殺到しているそうですが、「事実関係は調査中」だそうです。まあ、おそらく来年も再来年も「調査中」な気がします。ちなみに、お休みは月に2回、大きな踊りの会の後に数日、お盆と年末年始に数日程度だそうです。
白塗りのお化粧に華やかな振袖姿で花街を歩き、宴会に花を添える舞妓は京都の伝統文化でもあり、世界的にも認知されている貴重な観光資源です。訪日客の関心も高いため、京都府と京都市、さらに観光庁とも深い関係にあるそうです。とはいえ、永田町の後輩よりも若い女性たちがそんな生活をさせられているなら、由々しきことです。
ちなみに、神澤も何度かお座敷で舞妓さんや芸妓さんとご一緒させていただいたことがあります。お客様がお手洗いに立つと、おしぼりを持ってトイレの前で待っていてくれて、「かわいらしい気遣いだなあ」と思ったのですが、編集者さんには「そんなのキャバ嬢だってやってくれますよ」と笑われてしまいました。すみませんね、キャバクラって行ったことないので。
舞妓さんは「少女」ですから、七五三で着るような肩上げと袖上げがしてある着物で、かんざしも季節のお花をかたどった「花かんざし」です。拝見した日舞はすばらしく、お座敷遊びの醍醐味を感じました。お稽古は厳しいのでしょうが、素晴らしい日本の伝統文化ですよね。
舞妓さんは踊りなどの芸が上達して、年齢も上になると、芸妓さんになるわけですが、そこで不可欠なのが「パトロン」ですよね。芸妓になるのは「襟替え」といって、お披露目や着物、帯の新調の費用などで、昔は億単位のお金がかかるといわれていましたが、今でもそれなりにかかるようです。
それだけでなく、舞妓さんは普段の着物、踊りの会など芸事にかかる費用なんかも自分では出せませんから、十代のうちから富裕層のお客さんに出してもらうことに慣れてしまいます。今時のパパ活とはケタが違いますね。しかも、20歳までに芸妓さんになるための費用を出してくれるパトロンが見つからなければ引退だそうです。
お金だけ出してくれる人もいなくはないようですが、普通は「愛人」にしたいですよね。中には、自分の父親どころか、おじいさんのような年齢の方もいるでしょう。今回告発した方の周囲でも、自殺や自殺未遂は多かったそうです。
だいたい、舞妓さんになるのは京都以外の地方の方ですよね。舞妓さんのお仕事が魅力的なら、京都のお嬢さんたちが独占して、地方の人なんか入れないでしょう。
「女好きでカネに汚い人」元芸者が政治家を告発
この問題、実は過去にも何回か取り沙汰されていたようですが、今回ここまで広がったのは、やはりインターネットでしょうね。もともと京都の花街は企業の社長や大学関係者、芸能関係者など社会的地位の高い客が多く、関係者の口も固いので、問題が大きくならなかったのだと思います。
しかも、舞妓さんたちはスマホを「持っていない」ことにされているそうです。外部との接触手段が制限されていることもあって、今回のような内情はなかなか伝わらないのかもしれませんね。
とはいえ、京都だけでなく、東京の赤坂や神楽坂の芸者さんと妻子ある政治家のスキャンダルもよく報道されていますよね。田中角栄元首相は、正妻さんとの間に授かった眞紀子さん(元衆議院議員)のほか、神楽坂の芸者さんとの間に、夭逝した女の子のほかに2人の男の子を授かっていることが知られています。
また、不倫ではないですが、外交官で外務相などを歴任した陸奥宗光元衆議院議員は、芸者さんと結婚して、その奥様が亡くなられると、再び芸者さんと結婚しています。
最近では、沖縄・北方担当相などを歴任した福井照元衆議院議員が赤坂の元芸者さんに「女好きでカネに汚い人」として告発されています。福井元議員は、北方領土の「色丹島(シコタントウ)」を「シャコタントウ」と読んだり、ダブル不倫が発覚したりしていますよね。
ひどいことをすれば、告発されるのは当然ですよね。宇野宗佑元首相はお手当をケチって告発され、退陣に追い込まれています。また、真偽のほどはわかりませんが、亡くなったハマコーこと浜田幸一元衆議院議員が小泉純一郎元首相を「この芸者殺し野郎!」と罵倒したのは、永田町では有名な話です。
ただし、政治家が花街の料亭を使うのは、スケベ心だけでもないんですよ。秘密は厳守してくれますから、密談のときなど入店時刻を別々にして中でコッソリ集合……なんてこともあります。新聞記者とかが来ても「知らない」とか「○○さんと□□さんは会っていない」とか言うんです。昔は有名議員には必ず贔屓の芸者や女将がいて、そういう女性は自分の「旦那」(=パトロン)については、決して口外しませんでした。
今は一般の方がSNSなどで目撃情報をさらすこともあるので、もう密談もなかなかできなくなりましたね。最近は優雅なお座敷遊びにお金を使える政治家は絶滅寸前で、下品な遊び方をする方が目立つ気がします。良くも悪くも国会議員も「サラリーマン化」していて、議員報酬をもらうためだけに政治家になる例も珍しくないです。昔はよかった……というのもどうかと思いますが、かつては「集金力」があり、清濁併せ呑むタイプの政治家も多かったのは事実です。
この件をきっかけに、伝統のいい部分だけを残して、少女たちの人権が守られるようになることを祈っています。
『国会女子の忖度日記:議員秘書は、今日もイバラの道をゆく』 あの自民党女性議員の「このハゲーーッ!!」どころじゃない。ブラック企業も驚く労働環境にいる国会議員秘書の叫びを聞いて下さい。議員の傲慢、セクハラ、後援者の仰天陳情、議員のスキャンダル潰し、命懸けの選挙の裏、お局秘書のイジメ……知られざる仕事内容から苦境の数々まで20年以上永田町で働く現役女性政策秘書が書きました。人間関係の厳戒地帯で生き抜いてきた処世術は一般にも使えるはず。全編4コマまんが付き、辛さがよくわかります。