九州の小さな町議会の“議長の座”をめぐる大騒動はこれで終息するのだろうか――。宮崎県三股町議会(定数12議席)議員選挙の投開票が11日、行われた。同町選管の発表によると、同町議会の騒動の渦中にあった重久邦仁氏(69)は256票を獲得したものの落選した。重久氏は同町議会議長だったのだが、「議長職の任期」をめぐって同僚議員と対立。県や河野俊嗣知事をも巻き込む事態に発展し、全国紙やキー局のニュースにも取り上げられた。ついに議会は自主解散し、今回の選挙に至った。
地方自治法とローカルルールのギャップ
事の発端は、同町議会の「議長職の任期」を“慣例”で2年としていたことだった。地方議会の議長職について地方自治法第103条第2項には以下のように記載されている。
「議長及び副議長の任期は、議員の任期による」
一般的に地方議会議員の任期は4年なので、総務省は「議員の任期による(4年)」との法解釈を示している。つまり、ローカルルールと法律の間にはギャップがあるのだ。このため、重久氏は議会で申し合わせている2年間での議長辞職を拒否し、「法律での任期は4年」などと主張し、議長職に留まり続けることにしたのだという。
町議会は2021年5月13日、議会を混乱させたなどとして重久氏を議員除名処分にした。しかし、重久氏は同月20日、除名処分が違法であるとして、宮崎県知事に対し地方自治法第255条の4の規定に基づき、自治紛争処理委員による審理を要請。今年2月9日、河野知事名で、処分を取り消す“審決”が出された。
審決では以下のように処分取り下げの理由を論じている。
「懲罰事由に当るとした申請人の各行為には、一定の悪質性が認められるものの、有権者の投票によって与えられた議員としての地位を喪失させるべき程度にまで、極めて悪質であるということはできず、除名の懲罰を科すことは重きに失する。よって、本件処分は議会の自律権に基づく裁量権を逸脱又は濫用したものであって違法であり、取り消しを免れない」
そして、重久氏は議員に“復帰”。重久氏除名以降、新たに就任した議長と“2人議長体制”という極めて異質な状態が現出し、議会は機能不全に陥った。町議会は8月12日、臨時議会を開き、解散を求める議員発議案(自主解散)を全会一致で可決した。そして今月6日に告示された“全町議出直し選挙”の結果、重久氏は落選することになったのだった。
全国町村議長の44%の任期が「2年以内」だが……
全国町村議会議長会が7月1日に発表した『第67回町村議会実態調査結果の概要』によると、全国の町村議会議長の任期は「(地方自治)法第 103 条第 2 項で規定される法定の『4年』」が500 町村(54.0%)で、2年は 368 町村(39.7%)、1年は 40 町村(4.3%)だったという。
同会企画調整部の担当者は「任期が何年なのか調査は行っているが、なぜ2年なのかの理由についてまでは調査を行っていないのでわからない」と語った。
県議会や市議会でも“議長任期は2年”としている自治体は多い。中部地方の県議会事務局担当者は「長年にわたる議会改革の中で、多くの人に議長職を経験できるようにという各会派からの要望があったためだったと思います。(三股町の事例のように)地方自治法を引き合いに出された時、任期を法的に説明できる根拠があるのかどうか、そのルールがどのように制定されたのかについて現在、調べているところです」と語った。
どうやらほかの自治体でも、三股町と同じような騒動が起こり、議会が機能不全に陥る可能性が”ない”とは言えないようだ。
(文=Business Journal編集部)