歌手の華原朋美さんについて、夫の大野友洋氏による「給料没収」を10月20日発売の「女性セブン」(小学館)が報じている。同誌によれば、夫は税金を滞納し、茨城県南部に所有する自宅を複数の自治体から差し押さえられているという。
そのうえ、今年5月には夫の離婚歴と前妻へのDV疑惑、さらに子供が3人もいたのに慰謝料も養育費も払っていないことが「週刊文春」(文藝春秋)で報じられている。
にもかかわらず、夫が社長を務める芸能事務所に“出戻る”旨の声明が最近発表された。傍から見れば問題山積の夫と華原さんが離れられないのは一体なぜなのか?
強い「見捨てられ不安」
まず、今月初旬にこの連載で指摘したように華原さんの依存体質があると思う。誰か、とくに男性に依存せずにはいられず、依存対象を失うと非常に不安定になって、睡眠薬や抗不安薬などの処方薬に依存するようになる。
だが、それだけではない。依存体質であるがゆえに、依存対象から見捨てられるのではないかという「見捨てられ不安」も人一倍強いように見える。こうした不安をもともと抱いていたのかもしれないが、華原さんの場合、音楽プロデューサーの小室哲哉氏との破局によってさらに強まったのではないか。
小室氏のプロデュースによって華原さんは1990年代後半にミリオンヒットを連発し、文字通りシンデレラストーリーを地でいくような成功をおさめた。ところが、小室氏との破局によって坂道を転がり落ちるように転落していった。
このような外傷体験を抱えていると、「また見捨てられるのではないか」という不安にさいなまれるようになっても不思議ではない。だからこそ、相手の男性が問題を抱えていても、なかなか離れられないのだろう。
もっとも、皮肉なことに「見捨てられ不安」が強いからこそ、むしろ見捨てられるような事態を招く場合も少なくない。なぜかといえば、見捨てられることを避けようとするあまり、なりふりかまわず努力するが、それを相手が「重い」とか「うっとうしい」とか受け止めて離れていくからだ。
「見捨てられ不安」が強いと、相手を引き留めるために自殺未遂を繰り返すこともあるが、それも破局の原因になりうる。その結果、さらに不安が強くなり、悪循環に陥りやすい。
華原さんは、2015年に出版した自伝『華原朋美を生きる』(集英社)で、2006年から2010年まで交際していた男性から暴力で支配され、薬物依存に陥っていたと告白している。4年間もDV男から離れられなかった背景にも、やはり「見捨てられ不安」があるのではないか。
「共依存」関係にある夫婦
当時から10年以上経っても、華原さんの依存体質も「見捨てられ不安」も変わっていないように見える。しかも、年齢を重ねて48歳になり、子持ちでもある。そういう自分が離婚したら、また再婚できるだろうかという不安もあいまって、夫からなかなか離れられないことは十分考えられる。
もっとも、夫である大野氏との関係で華原さんが「見捨てられ不安」を募らせる必要はないと思う。なぜならば、大野氏は過去に何度も自宅建物を差し押さえられているうえ、自身が経営する芸能事務所で華原さん以外に売れっ子を抱えているわけではなく、資金繰りに困っているからだ(「女性セブン」より)。こういう状況では、華原さんが出演するコンサートやYouTubeなどの収入に依存するしかないだろう。
だから、この夫婦はいわば「共依存」関係にあると考えられる。精神科医としての長年の臨床経験から申し上げると、この手の夫婦は腐れ縁が続くことが多い。今後も、別れる、別れないでもめるかもしれないが、その後またよりを戻すとか、夫の芸能事務所に“出戻る”とかいうことを繰り返すのではないだろうか。
(文=片田珠美/精神科医)