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宮台真司さん襲撃犯も宗教2世…エホバの証人、子どもを鞭打ち・排斥、妊娠を断念

文=編集部/協力=小川寛大/「宗教問題」編集長
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エホバの証人の日本支部(「Wikipedia」より

 昨年11月に東京都立大学・南大沢キャンパスで同大学教授で社会学者の宮台真司さんが男に刃物で切りつけられ重傷を負った事件で、容疑者とみられる男性の母親がエホバの証人の信者であると、6日付「FLASH」ウェブ版が報じた。エホバの証人は「FLASH」の取材に対し、男の母親が現役の信者であることを認める一方、男は信者ではないと説明。また、男が暮らしていた一軒家は母親が用意したとされるが、以前は母親が信者たちとの集会場として使用していたものだという。旧統一教会の問題をめぐり「宗教2世」問題がクローズアップされるなか、議論を呼びそうだ。

 19世紀にチャールズ・テイズ・ラッセルを中心にアメリカで発足した聖書研究の集まりが起源だとされる、キリスト教系の新宗教・エホバの証人。1953年には日本支部として宗教法人「ものみの塔聖書冊子協会」が設立され、現在国内では20万人以上の信者がいるとされる。

 聖書の教えを厳格に守ることが特徴で、イエス・キリストの創造主とされる全知全能の神「エホバ」以外を崇拝することは禁じられている。未来に訪れるとされる「ハルマゲドン(世界の終末)」のあとにイエス・キリストが支配する楽園が出現し、そこに行くためには現世でエホバの教えに従う必要があるというのが教義の根本だ。

 エホバの証人といえば、輸血を受けることが禁止されているという教えも有名だ。過去には子どもが病院での治療や手術を受ける際、信者である両親が輸血を拒み、子どもが命を落とすという事例も発生し裁判に発展したことも。親が子どもへの「懲らしめ」として鞭打ちを行うことも広く知られている。宗教専門誌「宗教問題」編集長の小川寛大氏はいう。

「19世紀にモルモン教やセブンスデー・アドベンチスト教会などキリスト教系の新宗教がアメリカで次々と生まれたが、そのなかの一つ。一般的なキリスト教とは聖書の解釈が異なる部分があり、聖書に書かれている字面そのものに忠実なため、輸血の禁止や鞭打ちなどが行われる。神への信仰を絶対視するあまり、国家への帰属意識すら否定する側面があり、第二次世界大戦中はアメリカからもドイツからも弾圧された歴史も持つ。

 統一教会とは対照的に政治とは関わらないスタンスで、現在では強力なカリスマ指導者といった存在もいない。一見、信者たちによる各地域の組織が自発的に布教活動や集会、教義の実践を行っているようにも見えるのだが、この内部での同調圧力がすさまじく、結果的に強権的な組織風土を持つ」

 また、エホバの証人を取材する週刊誌記者はいう。

「信者を親に持つ子どもは『悪影響を受けるから』などの理由で基本的には幼稚園や保育園に通わせてもらえず、小学生くらいの頃から親が勧誘活動として行う戸別訪問に同伴させられ、中学生や高校生になっても日常的に多くの時間を布教活動や宗教活動に割くことを求めたれるため、部活動などに入れないケースも多い。また、布教活動を優先させるために大学への進学が許されなかったり、正社員としてフルタイムで働くことが困難なためアルバイトやパートで生計を立てている信者も珍しくない。

 教義に背けば脱会となり、信者である親を含む親族や知人たちから問答無用に『排斥』され連絡をシャットアウトされる。幼いころからエホバの証人のコミュニティーのなかで育ってきた人は、人間的なつながりを失い生活の足場を失ってしまう」

大学進学も出産も諦めさせられた

 こうした実態に関する報道は徐々に増えつつある。たとえば1月30日付「東洋経済オンライン」記事『教団から「排斥」されると両親からも絶縁される「エホバの証人」の残酷すぎる現実』では、子どもの頃から親に鞭打ちをされ、布教活動のために学校の部活動にも入れず、友達と遊ぶこともできなかったという男性の事例を紹介。疑問を抱き始め集会に欠席するようになり、父親から暴力を振るわれたその男性は両親に暴力を振るうようになり、父親によって精神科病院に入院させられ精神疾患を患い「排斥」されたという。また、この男性の妹は布教活動を優先するために、両親によって大学進学も出産も諦めさせられたという。

<人生を狂わされた。もう取り戻すことはできません>(「東洋経済」記事より)

 エホバの証人の信者を親に持つ40代女性はいう。

「教義で競争することは禁じられていたが、私は高校受験のために塾に通い、市でトップクラスの高校に入学した。今考えれば受験もれっきとした競争なので矛盾していたと感じる。偶像崇拝や国家の崇拝などが禁じられている関係なのか校歌の歌唱が禁じられていたため、学校の音楽の授業で一人ずつ校歌を歌うテストの際、クラスメート全員の前で『私は信教の関係で校歌が歌えないので違う曲を歌います』と言う羽目になり、なんともいえない空気が流れたのは本当に嫌な思い出です。また、通っていた高校は制服がなく、いつも地味な服を着ていかなければならないのも嫌でした」

「子どもたちを虐待し、権利を侵害し、自由を踏みにじってきた」

 こうした状況に政治も動きつつある。立憲民主党など野党は昨年11月、元エホバの証人2世、3世への国対ヒアリングを実施。鞭打ちでは肌を直接、革ベルトで叩かれ、親の信者同士では何を使えば効率的に子どもにダメージを与えられるかという話し合いが日常的に行われていたという証言も出ていた(以下、立憲民主党のHPより引用)。

<小学校高学年の頃には鞭に性的な羞恥心も覚えるようになり、毎日いつ自殺しようか本気で悩み、毎日ベランダから下を見て死ねるかどうかを考えていたが、実際には飛び降りる勇気はなかったと語る一方で、今でもあの時飛び降りていればよかったと思っているとも話しました>

<旧統一教会とは違い、エホバの証人に関連する事件が最近起きていないので報道できないというのは「勘違いだ」と語り、「事件は起き続けている」「宗教活動と信教の自由を隠れみのに親、家族、多くの信者が一体となって子どもたちを虐待し、権利を侵害し、自由を踏みにじってきた」と指摘しました>

<自ら受ける体勢を取るよう指示をされ、指示に従わなかったり逃げ出したりすると鞭の回数が増やされるなどもっと酷い目に遭う>

 そんなエホバの証人の問題点について、前出の小川氏はいう。

「信者である親が子どもに布教活動や集会、教義の勉強会への参加を強制して膨大な時間、そして自由を奪っているという点がもっとも問題。ある元信者は、幼いころから脱会に至るまで、過去にかかった時間、奪われた膨大な時間がもう取り戻すことができないということが一番つらいと語っていた。

 教義では競争が否定されているため、学校の体育の時間に剣道や柔道など『相手と競う』種目に参加することが許されず見学していたという証言も聞いたことがあるが、こうしたかたちで子どものさまざまな自由を奪っている面も問題。

 神奈川県海老名市にある本部と取材でやりとりしたことがあるが、広報担当者の対応は非常に親切だった。信者たちの行動・活動について、教団側は強制的に命令し、やらせているわけではないというスタンスが基本だが、信者たちに自発的に『そうやらせるように仕向けている』ようにも感じ、私は個人的にはそこに教団の問題点を感じる」

 前出の週刊誌記者はいう。

「宮台さん襲撃の容疑者の男とエホバの証人の接点は今のところ確認されていないが、男は高校卒業後ずっと定職に就かず引きこもり状態だったということなので、母親との関係がどのようなものだったのかは、犯行動機を解明する上で見逃せない鍵の一つになるのでは」

(文=編集部/協力=小川寛大/「宗教問題」編集長)

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