30日、プロ野球・北海道日本ハムファイターズの新本拠地であるエスコンフィールド北海道(北広島市)で、日ハムが今シーズンの開幕戦を迎えた。当日は試合を見ようと約6時間前から行列ができるほど、道内外からの注目度は高かったようだ。しかし、Twitter上には以下のようなツイートが相次いで投稿されている。
<北広島駅が激混みで大変>
<駅から出られない>
<試合終了後1時間近くエスコンフィールドにいたのに、行列が途切れていない>
そう、JR北広島駅や電車内が混雑し、乗客がすし詰め、大行列の状態に陥っていたのである。今回のような混乱状態については、エスコンフィールドが開業する前から懸念の声があった。
「あまりにもJR北ではキャパが足りない。この状態で乗客を運ぶのは至難の業だろう。これが続けば、球場に行ってまで野球を見たいと考える観客がいなくなってしまう可能性もある」(業界関係者)
JR北は今月にダイヤ改正を実施している。そのなかで「目玉ともいえる」(業界関係者)項目が、エスコンフィールド開業に伴う列車の増便である。JR北のホームページには「普通列車の編成両数の見直し」や「臨時列車が運転できるよう、ダイヤを見直し」などと記載されている。JR北広島駅から札幌方面への時刻表を見ると、ナイトゲームが開催されない日は、20時台には快速「エアポート」(以下、快速)が5本、普通列車が3本の計8本、21時台には快速が4本、普通列車が1本の計5本、22時台は快速4本、普通列車2本の計6本、そして23時台には快速1本、普通列車2本の計3本が運転されている。なお、終電は23時31分発となっている。
これがナイトゲーム開催日はどう変わるのかというと、21時台には臨時列車2本と特別快速1本の計3本が加わって計8本、続いて22時台も臨時列車2本と特別快速1本の計3本で合計9本、23時台は臨時列車1本増の計4本となる。
北広島市の資料によると、北広島駅の1日当たりの乗車人員数は2021年で5958人。19年には7705人だったが、翌20年には6017人となっており、減少傾向が続いている。人口も12年の6万305人を境として5万人台となり、19年には5万8375人、21年には5万7850人と少しずつではあるが人口減少が続いている。
このような乗降人員や人口の減少が続く北広島市にとって、新球場を誘致できたことは町政にとっても大きく、経済等の活性化を期待する声は多いが、反対に交通渋滞や混雑など、負の側面も多いのが実情だろう。
エスコンFは交通面で見劣り 駅では入場制限も
他のプロ野球球団の本拠地球場では、少なくとも2つ以上の鉄道や地下鉄、路面電車などが運転されており、乗客の分散化を図る仕組みがつくられている。それに加えてバスや駐車場もあり、さらなる分散化も可能だ。しかし、エスコンフィールドでは鉄道等のアクセスがJR北広島駅の1つしかなく、バスはJR北広島駅とJR新札幌駅、JR野幌駅、新千歳空港へと向かうバスがあるのみ。バスと鉄道等では1回ごとに運べるキャパが異なることや、さらなる乗り換えが必要なことなどを踏まえれば、エスコンフィールド北海道は現状、球場へのアクセスという面でどうしても見劣りしてしまう。
さらに、鉄道駅ではもちろんのことだが、北広島駅にもエスカレーターや階段への入り口があるためにホームの幅が一部狭い部分があり、函館や帯広、釧路方面へと向かう特急列車が通過する際には危険が伴う。JR北は乗客の増加に対応するためにホームの改修を昨年12月に実施し、ホームの長さを延長するなどしている。ところがそれも意味をなさず、ホームに乗客があふれ、北広島駅では入場制限が行われる事態となった。今回のような試合終了後の混乱状態が続くのであれば、早めに球場から引き揚げることも考えなければならない。試合半ばで球場を後にするのは心残りだが、本稿記者であればそうするだろう。
これを解消するために期待されていた「新駅」の建設は遅れ、影響が長期化することも考えられる。加えてJR北の経営悪化が重くのしかかり、鉄道の運行そのものにも影響する可能性がある。このままでは、日本ハムの新庄剛志監督も「(観客が)早く席を立つ」と懸念した通りの展開になりかねない。
勝てばファンはついてくる。とにかく、日本ハムに今必要なのは「勝利」の積み重ねだ。
(文=小林英介)