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楽天・田中将大のメジャー行き、なぜ膠着続く?新ポスめぐる日米野球機構間の攻防

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楽天・田中将大のメジャー行き、なぜ膠着続く?新ポスめぐる日米野球機構間の攻防の画像1『田中将大 ~若きエース4年間の成長~』(小学館/TBS『S1』田中将大取材班)
 東北楽天ゴールデンイーグルス田中将大投手のMLB(米・メジャーリーグベースボール)行きに暗雲が立ち込めている。MLBがNPB(日本野球機構)との間でほぼ合意に達していた新ポスティング制度を撤回。改めて修正案をまとめ、再交渉することになったためだ。

 海外FA(フリーエージェント)権未取得の日本人選手のMLBへの移籍を定めたルール=ポスティング制度に関して、日米間での交渉がまとまらない限り、今オフ田中が海を渡ることはほぼ不可能になる。ロッテの渡辺俊介のように自由契約となり移籍する道はあるものの、楽天がスーパーエースを何の見返りもなく手放すことは考えにくい。

●ポスティング制度とは?

 ポスティング制度は1998年にMLBとNPBとの間で締結された「日米間選手契約に関する協定」で定められたもの。MLB移籍を希望するNPBの選手の所属球団に対し、獲得を希望するMLBの球団が入札。最高金額で落札した一球団に選手との独占交渉権が与えられ、選手契約がまとまった場合、NPBの所属球団に入札金が支払われることになった。

 それまでNPBの球団は人気主力選手をMLBに送り出しても、何の見返りもなく、戦力的にも営業的にもマイナスにしかならなかった。そのため野茂英雄や伊良部秀輝のMLB入りに際しては、保有権を持つ日本の球団との間でトラブルが起きた。ポスティング制度の創設により、NPBの球団が入札金を得られるようになったことで、日本人トップ選手のMLB移籍の道は確実に広がった。2000年オフに制度利用の日本人第1号(制度利用第1号は1998年の広島東洋カープ、アレファンドロ・ケサダ)として、イチローが約1312万ドル(当時のレートで約14億円)の入札金でオリックス・ブルーウェーブからシアトル・マリナーズへ「円満」に移籍できたのも、ポスティング制度のおかげといえるのかもしれない。

●入札金高騰を防ぎたいMLB

 しかしMLB側にしてみれば、働き盛りの日本人トップ選手を獲得できるとはいえ、FA選手ならば支払わなくてもよい入札金をNPBの球団に支払わなければならない(佐々木主浩や松井秀喜などは、このFAでの移籍だった)。しかも06年の松坂大輔は約5111万ドル(同約60億円)、11年のダルビッシュ有は5170万ドル(同約40億円)と、超大物級の入札金はどんどんとつり上がっていった。

 入札金の高騰を防ぎたいMLBは、12年に「協定」を更新せずに破棄。新たにMLBから提案されたのが、一旦はほぼ合意されていた今回の新ポスティング制度だ。最高金額で落札した球団が独占交渉権を得るのはこれまでと同じだが、NPB側の球団に支払われる入札金は1位と2位の間の金額となった。さらに、契約がまとまらない場合、MLBの球団はMLBの機構と選手会の基金に罰金を支払うという内容も追加された。これにより10年の岩隈久志や、11年の中島裕之のような契約破談の可能性は低くなるものの、納める先がMLB側で、NPB側にはあまりメリットがない。

 この内容でNPBは了承したが、日本プロ野球選手会は不平等であるとして改善を求めた。しかし今オフの田中のMLB行きがかかっていることもあり、11月14日に2年間の期間限定で選手会も了承した。このNPBと選手会の事務折衝により、MLBへの正式回答が2週間ほど遅れることになった。

●「金欠」球団が異議申し立て「情勢は変わった」

 選手会の了承があった翌日の11月15日、MLBはNPBに新制度の白紙撤回と、修正案の提出を通告してきた。理由は「NPB側の総意が出るのに時間がかかりすぎて、情勢が変わった」(MLB・マンフレッドCOO)ためとされた。

 「情勢の変化」とは、同日行われていたMLBオーナー会議で、資金力に乏しい球団から新ポスティング制度へ不満の声が上がったことだ。

BusinessJournal編集部

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