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日産、日米で不可解すぎる裁判を展開…100億円超の理不尽な請求を行う裏側

構成=松崎隆司/経済ジャーナリスト
グレッグ・ケリー氏
日産自動車元代表取締役のグレッグ・ケリー氏

 東京地検特捜部の逮捕で幕を開けた日産自動車の「ゴーンショック」。その背後には、仏ルノーとの合併に反対する日産の一部の幹部たちの暗躍があったという。

 日産の追及は刑事事件だけでなく民事訴訟にも及び、カルロス・ゴーン氏には100億円、グレッグ・ケリー氏には14億円という途方もない請求が行われているという。しかも米国での株主代表訴訟では、2人に無断で日産が勝手に和解し、その賠償金を和解に同意していない2人に上乗せして請求しているという。いったい何が起こっているのか、元日産代表取締役のグレッグ・ケリー氏に真相を聞いた。

日産は水面下でゴーン氏とケリー氏の事件でも和解

――米国での年金基金からの訴訟の経緯について教えてください。

ケリー 米国では、企業の株価が大きく下落した場合、米国の株主が企業や役員を相手に民事訴訟を起こすのが一般的です。これらの訴訟のほとんどは、経済専門家が事件の価値を分析し、これに基づいた金額で和解が成立しています。

 日産の株価が大幅に下落したため、ゴーン氏が逮捕された直後に、日産、ゴーン氏、西川(廣人)CEO、ジョセフ・ピーターCFO、そして私に対して、米国で株主代表訴訟が提起されました。私の弁護士は、私たちが勝訴することを確信していたため、和解金は相当に低いと確信していました。

 証拠開示の過程で、私の弁護士は日産と日産の弁護士であるレイサム&ワトキンス(LW)に対して、ゴーン氏の報酬とクーデターに関する文書やその他の情報を要求しました。ところが日産は、私たちが要求した文書が公開されないように、この事件の価値をはるかに上回る金額で和解することを決定しました。

 私の知らないところで、日産は、ゴーン氏と私の事件でも和解したようですが、それは、もし日産の事件だけを和解し(ゴーン氏と私の事件は和解しなければ)、日産は私の弁護士が要求した書類を提出する義務を負うことになるからです。

――日産は、今回の和解金を日本での損害賠償請求に上乗せしていますが、これは法的に認められるのでしょうか。紛争の当事者として、このような対応についてどう思われますか。

ケリー 私の弁護士は、日産が米国ではるかに高い金額で和解するようなことをしなければ、米国で勝訴していたと確信しています。米国で訴訟の当事者が、事件の価値をはるかに上回る金額で任意に和解し、その和解金額を、証拠開示の権利もなく、米国で可能だった抗弁も使えない日本で、私に対して訴訟を起こすことは、非常に不当だと思います。また、日本の弁護士は、日産の主張は必然的に失敗すると強く思っています。

「弁護士と協力し無罪を主張し続ける」

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――ルノーは最近、日産への出資比率を下げ、EV合弁会社を設立して経営資源を投下するといわれています。今後、日産はどうなってしまうと思いますか。

ケリー 自動車業界では、競争力を維持するために必要な投資は非常に厳しく、特にEVや自律走行へのシフトに必要な多額の投資と、内燃機関を搭載した自動車への投資をサポートし続ける必要があるため、規模の経済を実現できる親密なパートナーを持つことが重要です。

 私は、日産がルノーに43%出資されている状態から、持株会社の元でルノーとフィフティ・フィフティのパートナーになれば、日産の将来はより明るいものになると考えました。この体制であれば、両社はそれぞれのブランドの自律性を維持しながら、両社とアライアンスに利益をもたらすシナジーの開発に強いインセンティブを与えることができます。このような構造であれば、日産は(両社が生み出すシナジー効果により)より大きな規模の経済と収益性を達成することができたはずです。

 さらにフィアット・クライスラーを加えることで、スケールメリットを高め、グループ(日産、ルノー、フィアット・クライスラー)の競争力と収益性を向上させることができたでしょう。

 また、日産はCEOをはじめとするトップマネジメントの継承プランが充実していたため、将来、日産とアライアンスを率いることができる優秀な幹部が多く、アライアンスにおいて対等な存在となることができたと思っています。

――今後、日本や海外でどのように裁判を戦っていくのでしょうか。

ケリー 私には非常に優秀な弁護士がついていますし、証拠から見ても、今回の件は刑事事件ではありません。今後も弁護士と協力して、日本での裁判で無罪を主張し続けて行きます。

 日産がゴーン氏とケリー氏と争っている裁判では、国内で報じられていること以外にも、米国での株主訴訟における不透明な和解などが大きな要素となっている。同社の一連の不可解な動きは、裁判のなかで明らかにされていくのだろうか。

(構成=松崎隆司/経済ジャーナリスト)

松崎隆司/経済ジャーナリスト

松崎隆司/経済ジャーナリスト

1962年生まれ。中央大学法学部を卒業。経済出版社を退社後、パブリックリレーションのコンサルティング会社を経て、2000年1月、経済ジャーナリストとして独立。企業経営やM&A、雇用問題、事業継承、ビジネスモデルの研究、経済事件などを取材。エコノミスト、プレジデントなどの経済誌や総合雑誌、サンケイビジネスアイ、日刊ゲンダイなどで執筆している。主な著書には「ロッテを創った男 重光武雄論」(ダイヤモンド社)、「堤清二と昭和の大物」(光文社)、「東芝崩壊19万人の巨艦企業を沈めた真犯人」(宝島社)など多数。日本ペンクラブ会員。

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