原発をつくるほど事業報酬が増える?
それに対して、東電の総括原価方式はどうか?
それは(1)の計算式とは相反する、(2)の計算式に限りなく近いものである。総括原価方式を簡単に説明すると次のようになる。
東電は人件費、燃料費、修繕費、減価償却費などのコストを、営業費として見積もっている。これが通常の一般企業の原価に相当するが、これに利益となる事業報酬が上乗せされる。
事業報酬は原価低減によって得られるのではなく、発電用資産に対してあらかじめ報酬率が決められており、直近の2008年では3%だ。発電用資産が増えれば増えるほど、事業報酬は大きくなる。そのため、原発のような何千億円もする巨額な発電用資産を建設したほうが、事業報酬も増えることになり、原発建設推進の大きな誘因になっている。
ゴミも資産に含まれる
不可解なことには、原発では資産の中に使用済み核燃料まで含まれていることだ。一般的にはゴミとしか思われない使用済み核燃料が、ここでは資産として扱われているのだ。
営業費と事業報酬を合わせた金額から、同業他社へ販売した電力料収入を差し引いたものが「総原価(電気料金収入)」とされる。電気料金体系は企業(工場含む)と一般家庭では異なるが、基本的に
・総原価÷販売する電力量=電気料金の平均単価
となる。
<総括原価方式の計算式>
・営業費=人件費+燃料費+修繕費+その他(税金など)
・事業報酬=発電用資産×報酬率(3%)
・総原価=営業費+事業報酬-他社へ販売した電力料収入
・電気料金の平均単価=総原価÷販売する電力量
前述した(2)の計算式に限りなく近い総括原価方式に基づき、東電が販売する電力の
・売価
・原価
・利益
に対する考え方を検証してみよう。
原価低減の意識が働かない
売価にあたる電気料金の平均単価は、消費者のニ-ズを反映した自由な価格競争によって決まるものではなく、供給側の都合で決まる独占価格に近いものである。電気料金は単に計算するものに過ぎない。そこには、消費者の要求に応えて電気料金を少しでも下げようとする企業努力が働かない。
コストに相当する営業費も、1円でも下げて利益を出そうとする仕組みになっていないので、原価低減やコスト削減のインセンティブが働かない。