市長と民間出身区長は、行政の目的を理解していない
――大阪市24区のうち、18区は民間から登用された市長です。民間出身の区長を職員はどう見ています?
A 所詮は4年間の任期制職員、アルバイトが来たという認識。本当に行政をわかっているかどうかは疑問。こちらも宮仕えの身。市民が選んだ市長が連れてきた区長なので、しっかりサポートするが、法やこれまでの行政慣習を無視した区行政を行うのであれば、それはもうサポートのしようがない。
B そもそも、市長は「行政を民間並みにする」とおっしゃるが、行政とは、世の規範のモデルであるべき。それを行政が民間に合わせては、社会がおかしくなる。例えば、新北区長に就任する中川暢三氏は、兵庫県加西市長時代、民間の発想を市役所に取り入れようとして、行政を引っかき回し、加西市の職員間では「市職員からの支持率0%」といわれた人。どういう意味でも先が思いやられる」
C 行政に民間の視点を取り入れるというのは、聞こえはいい。でもそれだと、例えば職員の勤務ひとつ取ってみても、サービス残業なども行えと言っていることになる。違法なことは、行政としてはできない。市長のよく言う成果主義も、行政の成果は民間とは異なる基準がある。そうした基準を、民間出身の区長が理解してくれればいいが……。新区長の経歴をみる限り、それは難しいだろう。
橋下市長は、市民にとっては不幸
――民間と行政で異なる基準とは、具体的には?
A 今、各種報道で知られる生活保護受給の問題を例に取ると、市長は、その受給率を減らせという方針。実際、減らすことは簡単。でもそうすると、本来福祉の網にかかるべき人を取りこぼす可能性がある。これでは市民にとっても不幸だ。
B 橋下市長就任以降、職員にも成果主義が求められている。生活保護受給の話が出たが、これも職員が受給を希望する市民を受け付け面談する際、じっくり話を聞き、手厚く対応すると、どうしても一日に面談する時間と人数は限られる。市民と血の通った行政を行うのなら、たとえ面談した人数が少なくとも、問題視するべき部分ではない。しかし今は、「数をこなせ」「できるだけ生活保護は受け付けるな」という雰囲気が色濃い。