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日経だけ読んでいると「増資インサイダー」がどれほど悪どい不正で、余波は野村や証券界にどんな打撃を与えているかが見えてこない。ある日経記者は、次のように話す。
「現場の記者が取材しても、編集局は大きく扱わない。ウチも書いてます、という程度の地味な扱いにしてしまう。野村へのおもんばかりが優先する結果です」
大広告主・野村に遠慮
野村証券は日経にとって「5指に入るほどの大広告主」(日経関係者)だそうだ。投信の業績発表など一般紙に載らない広告も、日経紙面には掲載される。
「競争で取る広告は定価割れが当たり前だが、野村は定価広告の比率が高い。編集の首根っこを押さえられているようなものです」
という記者もいる。
ジャーナリズムと情報産業を区別するのは、「金儲け」との距離の取り方だろう。「利益」を基準にすれば、筆は鈍る。目の前にブラ下がる甘い誘惑に目をつむる「やせ我慢」が、ジャーナリズムには必要だ。
「投資情報の販売に力を入れ、企業と密接な関係をテコに広告を取る」というビジネスモデルの日経に、ジャーナリズムを求めるのは“ないものねだり”かもしれない。
(文=山田厚史/ジャーナリスト 元全国紙経済部記者)
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