そこで今回、同ドラマのモデルとなっている法科学鑑定研究所代表の山崎昭氏に、「法科学鑑定とは何か?」「具体的にどのようなことを行っているのか?」「なぜ警察以外に民間の科学鑑定機関が存在するのか?」などについて聞いた。
●多岐にわたる鑑定手段や案件
東京・新宿区の研究所内に入ると、まず同ドラマで使用されているようなさまざまな科学検証ツールが目に飛び込んでくる。等身大の人形を指さして、「『アダム君』ていうんですよ」と教えてくれたのが山崎氏だ。
「これは、腕や足など各所に適切な重しが入った人形で、首つり自殺を立証したりする時に使用します」
同研究所は、あらゆる科学的な鑑定を行う民間の研究所だが、その鑑定手段は、DNA、指紋、筆跡、画像、その他の各種(血痕・毛髪・音声・精液)解析など多岐にわたる。また鑑定の対象となる事件も、交通事故や火災などさまざまだ。
ちなみに同研究所は、同ドラマ以外でも、『ガリレオ』『絶対零度』(共にフジテレビ系)、『相棒』(テレビ朝日系)、『MR.BRAIN』(TBS系)など数多くのテレビドラマや映画の制作に協力をしている。
まず、警察には鑑識科や通称・科捜研こと科学捜査研究所があるが、なぜ民間にも同じ機能を持つ研究所が存在するのだろうか。
「基本的に私たちの仕事は、『裁判用書類』を作成することです。一般の方が裁判をする場合、検察側には、証拠を立証する鑑識や科捜研などの機能があります。しかし一般の方の味方になる専門機関はそう多くありません。ですから、依頼に基づき、私たちがプロフェッショナルな視点で科学的な証拠を提出し、フェアな判決が行われるようにするのです」(山崎氏)
●ちょっとしたトラブルの調査依頼も
では、具体的にどのような事件を扱っているのだろうか。
「例えば、自動車によるバイクの右折巻き込み事故を起こしてしまった女性がいました。その女性は『バイクのライトはついておらず、事故現場の状況的に、まったく見えなかった』と主張しましたが、その供述を警察はまったく信じなかった。そこで私たちはあらゆる観点から調査をやり直し、実験による具体的な証拠を積み上げて裁判に臨んだ結果、罪はかなり軽いものとなりました」(同)