このような手術を行っても、Step.2のホルモン治療も併せて、継続的に実施する必要があります。
なお、FTMの効果に「立ち小便」が出てきますが、これは下品な意味ではなく、どの書籍でも 必ず登場するFTMのシンボル的な目標となっているようです。「立ち小便ができたことで、ようやく心の平安が得られた」という話が、たくさん登場します。
驚いたことに、形成されたペニスや膣で「性交ができ、性感が得られる」ことが示唆されています。
しかし、手術療法の目的は、異なるジェンダーの体型を手に入れることであり、異なるジェンダーとしての生殖能力を獲得することはできません。手術ではセックスとしての性を越えることはできないからです。
また、ガイドライン第4版において、性ホルモンの投与の年齢が条件付きで18歳から15歳に引き下げられることになりました。例えば、FTMの場合、月経の開始、乳房の発育が本格的に開始する前にホルモン治療を施せば、その後の手術療法の苦しみも小さくできるためです。
(3)法律
では、最後に、このような性同一性障害を、現在の法律がどのように取り扱っているかについて説明します。現行法では一定の条件下で、性同一性障害による戸籍内容の性別の変更を認めています。
まず、簡単な経緯から説明します(立命館大学法学部教授・二宮周平氏のレポート『性別の取扱いを変更した人の婚姻と嫡出推定』より)。
欧米諸国の多くでは、出生登録書における性別記載の訂正というかたちで、立法的に、あるいは行政手続き的にすでに認められていました。日本と同様の戸籍制度のある台湾、韓国でも認められていました。
一方、法律が制定される前の日本においては、司法による判断しか方法がなく、司法が戸籍の変更を認めたのは数件のみで、大部分は変更申請を棄却する判決となっていました。
しかし裁判所も、性同一性障害者が社会生活を行う上で、さまざまな問題を抱えている状況を理解しており、「これ以上は、法解釈だけでは対応できない」という状態にあったのです。
そんな中、2004年7月16日に「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が施行され、その結果04~10年の7年間で2375件の申し立てがあり、審理の済んだ2318件中2238件(97%)の性別変更が認められています。
同法における性同一性障害の定義(第2条)を、乱暴にまとめてみました。
(1)性染色体による性が明らかである
(2)自分が、上記(1)の性とは別の性別であると確信し続けている
(3)自分が、上記(1)の性とは別の性別に適合させて生きていきたいと思っている
(4)2人以上の医師の診断が一致している