東京・新宿区で、危険ドラッグを吸って車を運転し事故を起こしたとして11日、23歳の男が逮捕された。危険ドラッグを使って運転した疑いで運転手が現行犯逮捕されるのは全国で初めてのことだ。
警視庁は7月22日、脱法ドラッグを吸引した後に交通事故を起こす事例が続き、深刻な社会問題となっていることを受けて、脱法ドラッグの呼称を危険ドラッグと改めた。
また、今月の東京都議会定例会では、危険ドラッグについての条例改正がなされる見通しだ。具体的には、「東京都薬物の濫用防止に関する条例」において、「警察職員が危険ドラッグ販売店への立入調査権を付与」「指定薬物を緊急指定する手順」などが検討されている。
現行の法制度で新たな成分の危険ドラッグを取り締まるためには、薬事法において「指定薬物」に指定する必要があるが、それには2~6カ月かかる。しかし、今回の条例改正によって、薬事法に先駆けて危険ドラッグを緊急指定して調査・押収、場合によっては処罰することが可能になる。
危険ドラッグは麻薬や覚せい剤と同等、もしくはそれ以上の危険性があるため。使用の現行犯でなくても所持しているだけでも処分することが適当だとの意見は以前からあったが、現実的には薬事法で指定されていない薬物を取り締まることは難しかった。
危険ドラッグにまつわる事件・事故が相次ぐ中、東京都が取り締まりに先鞭をつけたことは評価できるが、一地方自治体が条例を制定しただけでは、どれほどの抑止効果があるかは未知数だ。
タバコも禁止して大麻を解禁?
いつの時代も、洋の東西を問わず若者は薬物に興味を持ち、エネルギーの発散に利用してきた。それをコントロールするために国家はタバコの使用を国民に許可し、その流通を管理してきた。しかし、国際的に喫煙を害悪とする風潮は高まり、タバコの価格は高騰し、若者はタバコを手にすることが難しくなってきた。
そのような中、“脱法ハーブ”として街中で売られているドラッグに、ファッション感覚で気軽に手を出してしまう若者が相次いでいるのだ。
刑事政策と薬物に詳しい東京都内の大学教授は、最近の薬物事情に対して、次のような提言をしている。
「今の段階では大きな声を上げられませんが、大麻を解禁すべきだと考えています。具体的に、政府関係者にも働きかけています。日本において大麻は禁止薬物とされていますが、実際には危険な物質ではありません。幻覚や幻聴に襲われることもなく、タバコよりも依存性は低く、健康リスクも少ないのです。旧来、政府がタバコを国民に許可していたのは、ある程度依存性があるほうが継続的に税金を徴収できるからです。しかし今の社会情勢を考えると、タバコを廃止して大麻を認めたほうがメリットは多いと考えています」
日本では大麻取締法によって規制されており、無許可所持は5年以下の懲役、営利目的の栽培は10年以下の懲役が刑罰として定められているが、アメリカでは複数の州において合法化されており、オランダに及んではコーヒーショップなどで気軽に入手できる。
先進国でも大麻への対応は大きく異なっており、是非の分かれるところだろうが、医学界においても、アルコールやタバコよりも有害性が低いとする論文は多い。今後の社会の動きによっては、大麻解禁を議論する余地があるのかもしれない。
(文=平沼健/ジャーナリスト)