――RCFは「地方創生事業コーディネーター」を雇用していますが、どのような業務を担っているのでしょうか。
藤沢烈氏(以下、藤沢) 東北の自治体や企業、NPOなどと連携して、復興支援と地方創生に向けた課題とニーズの抽出、事業企画の立案と実行などのプロジェクトをコーディネーターの立場で取り組んでいます。事業の主役はあくまで現地の方々であり、RCFはコーディネートを担っています。伴走者の役割と申し上げてもよいでしょう。
コーディネーターはRCFがスタッフとして雇用し、現在は60名が在籍しています。そのうち20名が現地に駐在し、30名が東京のRCF本部と現地を往復し、10名が本部勤務という内訳です。
――コーディネーターは具体的にどのような事業に携わっているのでしょう?
藤沢 水産加工、エネルギー、高齢者の移動手段確保など常時10件のプロジェクトに取り組んでいます。例えば水産加工では、漁師のグループなどと共同して、消費者目線に立った商品企画に始まり、マーケティング、販路開拓、PRなどを推進しました。また、エネルギーでは大手自動車メーカーとの共同で、アラスカから福島県内にLNG(液化天然ガス)を輸送して、商工業の事業所や家庭で使用する事業を検討している最中です。
さらに、これも検討中ですが、福島県内に中高一貫校を創設するプロジェクトも進めています。故郷をしっかりと理解して、思い続けてもらうことなどを盛り込んだカリキュラムを教育委員会と議論しています。
――これまでにどんな成果を挙げてきましたか?
藤沢 復興の象徴でもある水産加工品では約20件のプロジェクトをコーディネートし、付加価値の高い商品をつくってきました。商品は百貨店の伊勢丹にも納入しています。地域のきずなづくりとして、釜石市では市役所と共同で組成した「釜援隊」によるモデル事業や、官民連携の分野では、復興庁主管の「WORK FOR 東北」(被災地が必要とする人材を企業から派遣するプロジェクト)を手掛けたりもしています。さらに福島県庁が向こう2年間で5,000戸の公営住宅を開設する事業では、スタッフ100名分の予算を獲得しました。
――RCF派遣分も含め、こうしたプロジェクトのコーディネーターとして、どのぐらいの人数が稼働しているのですか?
藤沢 150~200名ぐらいではないでしょうか。数百名のニーズがあるので、まだまだ足りません。現地では何が課題なのかは把握されていますが、プロジェクトを実行するリーダーの数が足りないため、我々はコーディネーターを派遣しているのです。
ビジネスのプロたちが活躍
――RCFから派遣されているコーディネーター60名の年齢や前職について、お聞かせください。
藤沢 年齢は30代を中心に20代から50代まで幅が広く、男女比は半々です。前職は大手企業の役員や経営企画室勤務、100名の部下を統括したマネージャー、コンサルティング会社勤務などビジネスのプロが大半で、そのほかに厚生労働省と国土交通省の出身者もいます。募集説明会は2カ月おきに実施していますが、これまでに応募いただいたエントリー数は約1,000名以上に達します。今進めている募集でも、政府が推進する地方創生の流れを受けてなのか、10月16日時点で500名が応募されています。
――ビジネススキルが申し分なくても、地方創生事業コーディネーターの適性が問われると思いますが、何が決め手になりますか。
藤沢 仲間づくりのできることが不可欠です。現地では自治体、企業、NPO、住民などさまざまな立場の方々とチームを組んでプロジェクトを進めるので、チームマネジメント能力が求められます。また、矛盾と不確実性の多い状況で、喜んで仕事ができることも必要な適性です。つまり、RCFの掲げる次の3つの理念に合うかどうかを重視しています。
・Vision:どんなひとも地域も、価値をつくりあう社会
・Mission:コーディネートする力を通して、変革の担い手と共に、ひとをつくり、まちをつくり、産業をつくる
・Value:価値にコミットする。チームをつくる。当事者として関わる。矛盾と不確実性に挑む。常に学び続ける
――東北は高齢化に伴う医療・介護問題が一気に表面化していますが、この問題にはどのような考えで取り組んでいく方針ですか?
藤沢 東北では高齢化などに伴う社会保障問題が、他の地域に20年先行して表面化しました。RCFは、東北の各地域を高齢化社会の成功モデル、つまり高齢化対策の先進地域にして、そのモデルを全国に普及させていきたいと考えています。そして東京オリンピックが開かれる2020年、日本は世界から一層注目される国になりますが、東北は世界に恩返しをするとともに、持続可能な社会が形成できたことを世界に向けて中間報告をしたいと考えています。
――ありがとうございました。
(構成=編集部)
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