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織田直幸「テレビメディア、再考。」第3回

フジテレビ・福原伸治氏に聞く「自己批評番組」の可能性

文=織田直幸
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「今後、視聴者の声をどうやって取り上げていくのかということが非常に重要になってくると思います。キーワードは“共感”。メディアだけでなく、他の企業なんかもこの“共感”をどうやって取り込んでいくかがテーマになっていますから。

 今、視聴者がどういう興味を持ってどんなふうに考えているのか。それをテレビがどうやって取り込んでいくかということは、テレビの今後にとっても重要だと思います。例えばフジテレビでも情報番組『知りたがり!』(月~金/14:00~15:52)や『ノンストップ!』(月~金/9:55~11:30)でいろいろトライしていますし、『めざましテレビ』(月~金/5:25~8:00)でも「めざつぶ」という形で見ている人の声を紹介したりしているのは、何らかのやり取りがそこで視聴者とあり、そこで視聴者からの共感も得られるんじゃないかとも思っているからです」

 しかしその視聴者の声は膨大なゆえに、どうしようもない意見やノイジー・マイノリティ(声高な少数者)としか呼びようのないものも数多く含んでいるはずだ。

「たしかににネットの意見にはノイジー・マイノリティの傾向があります。番組を作る上でそこに引っ張られてはいけないなあとは考えています。ニコニコ動画なんかに出ていても、そうしたノイジー・マイノリティの意見はままあるし、時にひどいのもあります。
けれど、そういう中にも『なるほどなあ』という意見もある。『これだけテレビが嫌われているのにはそれなりの理由があるんだなあ』とか『そういう見方をする人も一部いるんだなあ』と思うんです。こういう声を切り捨てるんじゃなくて、そういう声にも耳を傾けることも重要だと思っています。そうしたノイジー・マイノリティ的な意見を切り捨てちゃうような人もままいますが、最近ではSNSなんかで視聴者の声も格段に可視化されていて、そこで見る側と作る側のズレに気づかされたりすることもあるのです」

批評番組の可能性

 そうやって回収された視聴者の声は実際には局内や番組にどうフィードバックされるのだろう。そういうシステムのようなものがあるのだろうか。

「インターネットや電話で頂いたいろいろな視聴者の声などは『視聴者センター』というものがあってそこに集約されます。視聴者の声はそこに集まった後、各プロデューサーで共有できるようになってます。『批評』自体もその声から選び番組でも紹介はしている。そういう意味でのシステムはあります」

 ただし、『批評』自体は単なる制作セクションの1番組であって、局全体や他番組に何かしらの“強制力”を持ち合わせているわけではないようだ。

「それでも、放送を通して『こんな声来てるよ』『こんな意見あるよ』とかみたいなことは番組に伝わる。あるいは各番組プロデューサーに『これは考えた方がいいよ』みたいなことを個人ベースで伝えたりすることもあります。かならずしも『批評』という番組で紹介された意見だけじゃなくても、バックヤードでは局内でいろいろなやり取りがあるんです」

『フィードバックをしてはいるが、単なるフィードバック機能のためにこの番組をやっているわけではない』。福原さんが実際にそう話したのではないが、言外にそう言っているように私には聞こえた。

 それはわかる。おそらく福原さんは単なる視聴者の声を局内にフィードバックするためにこの番組を作っていたわけではないのだ。この番組に何か別の可能性を見ていたのだと、私は思う。

 その“何か”とは、何だろう。

「『批評』という番組だけではなく、テレビメディア全体としても視聴者の声をどう生かしていくのか、ソーシャルメディアとどう向き合うのかというのは、今後、情報番組だけではなくてバラエティやドラマですら重要になっていかざるを得ないと思っているんです。そういうものとどう付き合っていくか、どう連携していくかは、これからのテレビメディアのキーワードになってくると思います。

織田直幸

織田直幸

株式会社ゼロ社・代表取締役。プロデューサー/編集者

2012年8月、㈱カンゼンから書き下ろし小説、テレビメディアの崩壊と再生を描いたアクション小説『メディア・ディアスポラ』が上梓された

メディア・ディアスポラ

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