テレビが持つ意味や価値が大きく変わってきた。大衆への影響力はいまだ強く残るものの、ネット上では、その一面性や権威性、商業性などが批判の的となっている。「メディアの王様」の座が揺らぎつつあるテレビに求められる変革とは何なのか? キーマンたちへの取材を通して考える――。
「自己批評番組」というものをご存知だろうか?
放送法に基づいて、各局には「番組審議会」が設置され、その議題や議事などはウエブなどへの公開が義務づけされている。私たちは誰でもウエブを通して、その議事録を容易に閲覧することができる。(例:「フジテレビ番組審議会」)
しかし放送不祥事が相次いだ80年代になると、国がこの審議報告と自己批評を併せて定期的に放送するようことを放送局に求めていった。その結果出来たのが、この「自己批評番組」である。
在京キー局でいえば、日本テレビは『あなたと日テレ』、TBSは『TBSレビュー』などがあり、だいたい朝の5時台、月に1~2回、15分~30分の放送時間のものが多い。自局や番組に寄せられた視聴者の声の紹介を中心に構成される。
申し訳ない言い方だが、その多くには面白さはない。見ていると、“これで我々は責任を果たしています”とでも言われているような気になってくる。番組の向こう側にいるはずの制作に携わる生身の人間をほとんど感じることができないのだ。
が、その中で明らかに制作側の葛藤や意志を強く感じる番組が一つだけある。
それが『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ/毎週土曜朝5時~6時に生放送/以下『批評』)だ。
『批評』のプロデューサー・福原伸治さんは今まで先験的な企画や実験的な番組を多数手がけてきた方だということを、私は知っていた。
ほんの少しだけ例を挙げてみる。
福原さんが一番最初に作った番組は、1987年2月放送された『TV’s TV』という深夜番組だった。それまでテレビモニターという機器にはテレビ番組しか映されていなかったが、80年代に入ると、テレビモニターにはゲームやビデオや監視映像や環境映像など、様々なものが映し出されるようになっていった。この番組ではそうした“モニターに映し出されたテレビ番組以外の映像”ばかりを集めて紹介していた。その頃の映像をネットで検索すれば、ニコニコ動画で見ることができる。今、それを見ると「あれ? これYouTubeといっしょだよなあ……」と、多くの人が思うはずだ。
2000年に手がけた『秘密倶楽部 o-daiba.com』では、日本のキー局ではかなりの初期段階でネットと連動した番組を作った。今となっては当たり前の「ネット限定配信・オリジナルドラマ」もこの時、彼によって初めて作られた。
2008年の『近未来予想ツギクル』では番組中、画面下にツイッターのようなテロップが常時流れていた。当時まだツイッターなどではそれほど普及してなく、これはもちろん“疑似的チャット”なのだが、これを今見ると私はNHKの『NEWS WEB 24』をどうしても想起してしまう。
挙げていけばキリがないのでこれくらいにするが、おそらく福原さんという方自身がテレビ番組制作者であると同時に、多メディア時代にあってテレビメディアに対し元々批評的な視線を持っていた方なのだろうなと思う。
3.11以降のメディア構造の激変の中、テレビはどうあるべきか、テレビはどう評価され批判されるべきなのか。テレビメディアの内側にいる人はそのことを今、どう捉え考えているのか……。そのことを『批評』を作っている福原さんに聞けば、得るものが多くありそうだと私は考えた。