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織田直幸「テレビメディア、再考。」第3回

フジテレビ・福原伸治氏に聞く「自己批評番組」の可能性

文=織田直幸
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 まずは『批評』という番組自体のことから始めて、テレビメディア全体の話を福原さんにお伺いすることにした。

『新・週刊フジテレビ批評』という番組は1992年から始まった『週刊フジテレビ批評』の後続番組だ。他の「自局批評番組」と同じように番組に寄せられた声なども紹介するが、『1 week Topics』や『Critique TALK』など、それぞれ15分ほどの独自の視点を持った企画をやっている。こんなことを、しかも週一回毎回一時間やっている局は他にない。
福原さんはこの番組を引き継いだ時、この『批評』をどう考え、どう新しいものにしようと思ったのだろうか。

「元々この番組にはフジテレビ自身の批評番組であると同時に“テレビそのものをどんなふうに見るか”という主旨がありました。そうしたベースの部分は継承しつつも、テレビはもはや単独のメディアとしては存立し得ないわけで、他のメディアとの関係、例えばネットメディアとはテレビはどう向き合っていけばいいかを番組の中で考えていこうと思いました」

 以前の『週刊フジテレビ批評』と較べて『批評』になって変わった一番わかり易いところとしては番組を「生番組」にしたことだろう。

「テレビは世の中とどう向き合っていけばいいか、どう関わっていけばいいか。さらにはその都度起こっていくタイムリーな事象に対してはどうキャッチアップし、どう考えていけばいいのか。番組を “生”にしたというのはそこらへんのことにテーマを広げていきたかったということもあったからです。単にテレビだけというよりも、テレビを取り巻く環境なども広く考えていきたかったのです」

 実際に今まで『批評』がやってきたエポックメイキングな部分には、“時間軸”にまつわるものが多い。

「2010年4月、Ustreamで番組前に30分くらい事前番組的なものを流しました。おそらくオフィシャルにテレビ番組をネットに出したのは初めてだと思います。その後、ニコニコ生放送と組み、『批評』自体を批評する『「フジテレビ批評」批評』という番組を8回ほどやりました。このほとんどは実際の『批評』を放送する直前に流したものです」

「その週の放送の1~2日前に尖閣諸島ビデオ流出があり、その週『批評』で予定していたものを全てやめて、番組全編『尖閣ビデオ流出を考える』という番組にしたこともあります」

 どれも“生”の強みが発揮される“時間軸”を強く意識した番組制作だと思う。

視聴者の声をどう生かしていくのか、ソーシャルメディアとどう向き合うのか……テレビメディア全体としても、それがカギとなる

 そんな福原さんに特に聞きたかったのは、ソーシャルメディアとどう付き合っていくかということだ。今時のソーシャルメディアを見れば、テレビ批評や視聴者の反応が常に飛び交っている。「自己批評」のためには、この声を無視できないはずだ。

 元々、福原さんはテレビ人としては突出して他メディアを意識しそれを取り込もうとしてきた方だと私は思うが、『批評』をやっていく中で福原さんはソーシャルメディアとテレビの関係をどう考えたのだろうか。

「ソーシャルメディアとテレビの関係については、最近確実に変化していると思います。NHKなんかは派手にやっているし、民放もまあやるようになりました。テレビメディアがソーシャルメディアをどんどん取り込んでいくのは、一つの流れになっていると思います。3.11が大きなターニングポイントでした。あそこでテレビに携わる人間自身のネットメディアに対する考え方が変わったのだと思います。

 以前はネットに対する警戒感が強くありました。しかし震災ではネットの情報が優位性を持つ部分もあり、例えば私たちも報道特番をニコニコ生放送やUstreamに流しました。そういうことを重ねているうち、テレビ側の意識も変わっていったのだと思います。グーグルとの提携も、そういう一連の流れの結果だと思っています」

 3.11では、ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアに流れる情報がたくさんの人を救った。即時性の高い情報やその拡散能力、携帯電話からPCまで端末を選ばないことなど「ネットの優位性」を、テレビは無視できなくなったのだ。

織田直幸

織田直幸

株式会社ゼロ社・代表取締役。プロデューサー/編集者

2012年8月、㈱カンゼンから書き下ろし小説、テレビメディアの崩壊と再生を描いたアクション小説『メディア・ディアスポラ』が上梓された

メディア・ディアスポラ

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