というのも、野心のある優秀な監督は決して日本代表の監督という職を選ばない。サッカー界において、日本は世界の端にある小さな島でしかない。FIFAコンフェデレーションズカップやFIFAワールドカップの決勝トーナメントで実績を残さない限り、日本代表監督というキャリアが世界的評価を受けることはない。一方、欧州の代表チームやリーグ、南米代表の監督を務めれば、親善試合や大陸カップでも評価を受けられる。
JFAがいつも監督選考に悩まされるのは、日本という弱小サッカー国の世界的立場がある。アルベルト・ザッケローニ前監督にしても、イタリアでは“終わった監督”という扱いだった。57歳という脂がのる時期に日本代表監督に就任したザッケローニ監督の当時の状況は、2006年にトリノFCの監督を1シーズン務めて以降、10年に代打でユベントスFCの監督を4カ月務めた実績しか持っていなかった。
一方、56歳のアギーレは直前までスペインのリーガ・エスパニョーラのRCDエスパニョールを率いており、中堅クラブの順位を維持。翌年の契約の話も出ていたが、「エスパニョールとの契約を更新しないという情報は入手していた」(原専務理事)ため、JFAが10年に続いてアギーレ監督にオファーを出したのだ。そして、前回は断られてザッケローニ前監督と契約するしかなかったが、今回は見事にオファーを承諾してもらい就任の運びとなったのだ。
「スペインにいれば、八百長の件でメディアにも追われ、さらに検察の監視の目も強まるかもしれない。日本に来てしまえば、少なくともメディアスクラムに遭うことはない。検察もそうそう何度も取り調べることがないと踏んだのかもしれません。アギーレ監督が今回の件で平然としているのも、こうなるのは想定の範囲内だったように見えてしまいます」(サッカー界関係者)
JFAはアギーレ監督と代理人に“つかまされて”しまったか。いずれにしろ、近日中には白黒がはっきりしそうだ。
(文=TV Journal編集部)