筆者が目にしたところでは、この結果を受けてリベラル系や左派系の識者の間に大きな失望感が広がっている。なかには次の政治的主戦場を憲法改正の国民審査にまで求める発言も聞かれる。確かに選挙での勝利を受けて安倍首相は念願である憲法改正に言及したが、憲法改正が直近の政治的課題になったとはとてもいえないだろう。むしろいわゆる「保守化」への傾斜に大きなブレーキがかかっている状況だといえる。
その兆候は少なくとも3つある。
1つめは、自民党単独では公示前とほとんどその議席数が変化していないこと、そして投票率が極めて低いことだ。国民の多くが今回の選挙の争点に関心を持てなかったのか、あるいは支持すべき政党を持ちえなかったからではないか。公明党は憲法改正については自民党の改憲姿勢と同じではない。維新の党など野党との調整も難航が予想される。つまり憲法改正については、自民党は単独で衆参両院で3分の2を占めることが必要になってくるだろう。
この条件をみたすためには2016年7月に予定されている参議院選挙で3分の2以上の議席を獲得し、さらに同日選かあるいはその前後に行う衆議院選挙でも大勝し同様となることが必要になる。しかし、今回の選挙結果より、国民は自民党に憲法改正のゴーサインを出していないどころか、憲法改正が政治的に緊急の課題だとみなしていないことが明らかとなった。もし国民の理解が得られていれば投票率はもっと上がったであろう。それだけ国民の自民党への姿勢はクールだったといえる。
●沖縄での大敗が意味するもの
2つめは、沖縄の全選挙区で自民党が大敗したことである。米軍基地の移設問題がこじれてしまい、それによって政府と沖縄県民との政治的対立が先鋭化してしまった結果である。安倍首相はこの問題について選挙後の記者会見で「県民との対話」姿勢を強調したが、その行方はかなりの困難が予想される。沖縄の基地移設問題が、かつての民主党政権がそうだったように政治的蹉跌にもなりかねない。少なくとも「保守化」という観点からいえば明確に沖縄はノーだった。その声を無視することは不可能だ。