一般論として、衆院選の際は選挙にばかり報道も国民の関心も向かってしまう。その上、任命されてから最初の衆院選で国民審査を受けることから、最高裁裁判官としてのキャリアも短いため、判断材料も少なく、裁判官の実績や人物像が十分に把握されていない。このような状況で、国民の大多数が罷免を望むということは考えにくい。従って、この罷免率(罷免を可とする票の割合)は低いことが常であり、この制度は形骸化していると指摘されることが多くなっている。
●司法への不信が深刻化
最近の国民審査での罷免率は、2005年は平均7.8%(対象は6名)、09年は6.7%(対象は9名)だったが、12年には平均8.1%(対象は10名)にまで上昇していた。その罷免率が、先月の衆院選の際の国民審査では、平均9.2%(対象は5名)にまで高まっていることがわかった。ちなみに、各対象裁判官の罷免率の詳細は以下の通りである。
【14年12月 国民審査罷免率一覧 罷免率の高い順】
木内道祥(弁護士出身):罷免率 9.57%
池上政幸(検察官出身):罷免率 9.56%
山崎敏充(裁判官出身):罷免率 9.42%
鬼丸かおる(弁護士出身):罷免率 9.21%
山本庸幸(行政官出身):罷免率 8.42%
※罷免率は、有効投票数約4600万票の中で×を投じた票の割合を元に計算
今回罷免率が全体的に高まったのは、投票率が低く、投票したのは問題意識の高い層が多かったためという要因も考えられ、加えて最高裁を中心に裁判所全体の問題ある実態が明らかとなり、司法への不信が日本中に広まっていることも挙げられるだろう。