社内の「追い出し部屋」から、「人材紹介会社」丸投げへ
記事の内容としては、企業のリストラが少し前に流行した「社内の追い出し部屋」から、最近は「人材紹介会社を介在させる巧妙な手口」に変遷していると伝えたものだ。ページ数の関係で同誌に載せられなかった部分も含めて、東京管理職ユニオン執行委員長・鈴木剛氏に聞いた、最近のリストラ手口を補足しよう。
まず、大企業の「追い出し部屋」を簡単に紹介すると、リストラ対象者は本社や関連会社の一部署に異動させられる。部署の名称は、「キャリア開発チーム」や「事業・人材強化センター」、中には「人財部付」もあったという。そこで対象者は書類をPDF化したり、物流現場で荷物の出し入れをするといった単純作業をさせられるのだ。これら手口の具体例は、鈴木氏の著書『中高年正社員が危ない』(小学館101新書)に詳しい。
それが最近は、会社自らが手を下さない手法になってきた。リストラにつながる言葉を人事部や上司は直接本人に伝えず、対象者は出向や業務支援の立場で人材紹介会社に移って業務を行う。そこでは「人生の根っこ探し」などと称した“謎の心理テスト”も受ける。YESかNOで回答するのだが、どう答えても結論は決まっていて「外に活躍の場を求めたほうがいい」となる。
こうしたリストラビジネスを手がける人材紹介会社には、大手もあれば新興企業もある。対象者へのキーワードは「再教育」で、「あなたの隠れた才能を見つけましょう」「現在の業務以外に、これを身につければスキルも高まる」といった、ホメ殺しもする。つまり追い出し部屋のように屈辱を与えるのではなく、自尊心をくすぐりつつ自発的な退職を促すのだ。
その結果「外に活躍の場を求めて」転職する人もおり、それも同じ人材紹介会社が関わるのだという。従来のように企業自身が労務問題に関わらず、業者に丸投げする傾向にある。鈴木氏は「対象社員と向き合わず、面倒なことを避けたがる風潮」と指摘する。
会社の産業医が介在する話も漏れ聞こえる。例えば、上司が「疲れているようだな。社内クリニックで診てもらえ」などと受診を勧める。そこで依存性の強い薬を処方され、服用すると眠くなったり、気力が萎えたりして、やがて休職せざるを得なくなるという話だ。これについては裏づけが取れていないので、あくまで情報として紹介するが、精神科医ではなく心療内科医が多く、すぐ投薬するのが特徴的だという。