–まず、リラクゼーション業界の現状について教えてください。
A 昨今の健康・癒やしブームの後押しもあり、市場規模は大きくなっています。消費者にとって、リラクゼーションサロンの存在は身近になり、店舗数も増加傾向にあります。ただ、低価格競争が激しくなりつつあり、ビジネスモデルとしては多店舗展開をしなければ利益が出にくくなるという弊害が生じています。
–価格競争が激しいとのことですが、景気回復の影響はありますか?
A 成功している店舗は、低単価の店舗と、高単価で質の高いサービスをする店舗の両極端に分かれています。逆に言うと、価格やサービスの中途半端な店舗は厳しい状況です。低単価のお店は10分1000円前後が一般的で、さらにクーポン利用で初回半額にするなど価格を引き下げる動きもあります。現場からの声から判断すると、景気の影響はあまり感じられません。
–そこまで価格競争が続けば、業界全体に影響が及びそうですね。
A そうですね。どこかで大きな変更を考えなければいけなくなるでしょう。結局、しわ寄せを受けるのは現場のスタッフたちなのです。しかし、一度下げた値段を引き上げるのは非常に困難です。一時期の美容業界と同じような状況で、価格を上げたいけれど、なかなか踏み切れない。そんなジレンマを抱えています。
–価格競争以外に表面化している問題点はありますか?
A 人手不足が深刻です。就職・採用の現場が今は売り手市場で、リラクゼーションの業界で働きたい、という絶対数が減っています。また、働いても長く続かない。特に若い世代が少ないので、店を任せるレベルの将来的な幹部候補のスタッフも足りません。
–なぜ若い世代が少ないのですか?
A 大きな要因としては、安定性がある職業とはいえない点だと思います。リラクゼーション業界は、基本給は少なめで、指名によるインセンティブ(成果報酬)で稼げ、という経営スタイルが多いです。アルバイトでも完全歩合制というお店も珍しくありません。若い頃はよくても、現場で長く働いているうちに「将来に対する不安を感じる」という声も聞きます。基本的には力仕事で、決して楽な業務内容ではないので、若い女性には厳しい環境かと思います。少しずつ制度を見直している段階ですが、長期キャリアで考えると難しい面があるのも事実です。