だが、その後がいただけない。「弊社といたしましては、『保険契約の効力が途切れることのないように』という思いから、フォローアップのつもりでお電話を差し上げておりましたが」と、あくまで自社の親切心を強調し、「今後はこのようなお電話をすることがないよう手続きをさせていただきましたので、なにとぞご安心ください」と力強く宣言されていた。
さらに目を引いたのは、最後にあった囲み部分だ。「この件に関するお問い合わせ先」として部署名・電話番号と受付時間が明記されていた。仕事柄、広報やIR(投資家向け広報)などでよく見かけるが、お詫び文書としては違和感を抱いた。残念ながら、ビジネススクールの消費者コミュニケーション「お詫びの仕方」講座で失敗例として例示されるような内容だった。
一連の対応を体験した筆者のアフラックに対する企業イメージは、「ブラック」だ。同社のテレビCMに登場するキャラクター、ブラックスワンよりもたちが悪い。いくら経営者がもっともらしい発言をしても、目を引く広告宣伝をしても、消費者と接するのは従業員一人ひとりだ。
同社には消費者対応の先端企業でいわれる言葉「顧客の声を『聞く』のではなく、『聴き分ける』」という言葉をお贈りしたい。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
●高井 尚之(たかい・なおゆき/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
1962年生まれ。(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に、10月に発売された『カフェと日本人』(講談社現代新書)がある。これ以外に『「解」は己の中にあり』(講談社)、『セシルマクビー 感性の方程式』(日本実業出版社)など、著書多数。
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