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●日本の取るべき選択肢
たしかに、そうした外国事情はあまり首相官邸に上がっていなかったもようだ。この点は、財務省の落ち度だが、今焦ってAIIBに参加するのは、もっと日本の国益に反することになる。長い目でみれば、AIIBに一定の関与をするのは外交戦略上当然であるが、現時点では焦る必要はないというのが重要なポイントだ。
中国の金融システムは金利の自由化すら終了していない途上国並みの未熟なもので、国際金融業務のノウハウもない。いずれアジアで実績のある日本に水面下では協力を求めてくるはずだ。その時点で理事会が実質的に関与できるかどうかを見極めてから参加しても、遅くはない。
さらにいえば、アメリカと日本が参加しないのは、AIIBにとって致命的な欠陥になる。なぜなら、AIIBは中国が後ろ盾になるわけだが、それはAIIBの格付けが中国と同等になるということを意味する。現在、中国の格付けは、トリプルAのアメリカ、ダブルAの日本より下のシングルAで、韓国より低い。つまりAIIBはせいぜいシングルAクラスであり、トリプルAである一般的な国際金融機関と比較して三流といってよい。
これはAIIBの資金調達コストが高まることを意味し、AIIBの貸出金利が高くなり、日米が主導するアジア開発銀行(ADB)と競争しても分が悪くなる。このため、中国は必ず日米に参加を求めてくるはずだ。その機会を狙って、理事会が実質的に関与できることを確約できた時に初めて日本は参加すればよいというのが、国際金融の現場を踏まえれば日本の取るべき選択肢といえよう。
(文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授)
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