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菅官房長官の懐刀・改革派“変人農家”が怒りの出馬!地元自民と戦い 政権は見殺すのか

文=井上久男/ジャーナリスト
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故郷の破壊をくい止める

 この「ふるさと弁当構想」を発展させるかたちで、岡本氏は今回の選挙での主要政策を打ち出した。その政策の中心には、渥美半島内に「産直広場兼バスステーション」を置くことが掲げられている。これは、地元の個人商店や農業・漁業従事者が販売経路を幅広く選択できるために設ける施設で、イメージとしては「道の駅」のようなものだ。その販売施設を巡回し、主要駅にまでつながる新たなバス網を第三セクターで構築する考えだ。販売施設で上がった収益を、バス運営の資金に充てる構想だ。

 岡本氏がいう「おにぎりの付加価値」をしっかりと農家が取り込めるようになれば、このステーションでは一定の利益が期待できるのだ。渥美半島では地元産とうたうあさりご飯の弁当が高く売られているが、実際に製造しているのは地元以外の業者であり、そこに付加価値が流れているという。施設とバス網を関連付ける狙いは、地方の公共交通網の維持整備のためだ。渥美半島では限界集落のようなところも出始めており、交通網がなければ学生は通学できず、運転できない高齢者ら住人は買い物にも行けないので、ますます人が住まなくなる。これでは「故郷が破壊されてしまう」と岡本氏は危機感を募らせている。

立ちはだかる「利権集団」

 また岡本氏は、トヨタに依存する市の財政からの構造転換も訴える。グローバル経済の中で活動するトヨタの経営にはリスクがつきもの。リーマンショック後にトヨタは赤字に陥り、本社がある豊田市に法人税を払えなくなった。パナソニックもプラズマ戦略が失敗したため、行政から補助金を受けて建設したばかりの大阪・尼崎工場での生産を中止、工場を閉鎖した。こうした他都市の事例を鑑みながら岡本氏は「田原市の財源は渥美半島にある農産物などの豊かな資源を活用して、事業を興し、自ら賄っていく考えが重要になる」と訴える。

 しかし、こうした政策に取り組もうとすると、既存のバス網を持つ地方のバス会社などが反対に出る。農家が新たな販売網を持つことに農協も協力しない。こうした企業や農協は自民党の有力支持者である。地方の既得権の多くは自民党の支持者だ。こうした人たちは、同じく立候補した元田原市議会副議長の北野谷一樹氏や元同市教育部長の山下政良氏を推すとみられる。

 また、岡本氏の政策には規制緩和も必要になる。それがないと、施設での販売が難しいケースも想定される。例えば、農家が自家製の野菜を使って屋外の窯で焼いた焼きたてのピザを売る場合、愛知県ではピザの窯は防火設備のある屋内にしか設置できない条例がある。まず、こうしたことから規制緩和をしなければならないが、岡本氏によると、愛知県は前向きではないという。バス路線の新設にも許認可が必要だ。

 岡本氏の政策は、大胆な規制緩和がないと前に進まない面もあるが、そこに地方の自民党やその支持者である「利権集団」が立ちはだかる。要は、変革しようと思えば既得権益とぶつかってしまうのだ。

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