日経平均株価が2万円を超えて日本経済は好調かと思いきや、経済メディアでは「セルインメイ(5月に売れ)」という相場格言が話題になっている。
「週刊現代」(講談社/5月9日、16日号)の記事『「5月暴落説」「ギリシャ・デフォルト説」をどう見るか』では、5月相場に要注意だという。5月12日にIMF(国際通貨基金)への返済期限があるギリシャのデフォルトリスクで「5月11日が危ない」という声を紹介している。
また、「日経平均が瞬間的には1万7000円位にまで下振れする可能性もある」と識者は指摘している。
同記事の中で広木隆マネックス証券チーフ・ストラテジストは「過去20年間の日経平均の月別パターンを見ると、5月は1.5%のマイナスで、8月、10月と並んで値崩れを起こしやすい月だということが統計上明らかになっている」と語る。
また、記憶に新しいところでは2013年5月23日、前夜のFRB(連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長(当時)の量的緩和の縮小示唆発言を受けて、日経平均株価が1日で1000円以上も下落した「5月の暴落」もあった。
「週刊エコノミスト」(毎日新聞社/4月28日号)の記事『どうなる?上期相場 株価2万円』でもセルインメイに言及し、5月売りが起きる理由として、ヘッジファンドが6月の中間決算を前に利益確定することを挙げている。「ヘッジファンドの決算期は、11月と12月が多い。中間決算前の1カ月の間にポジションの巻き戻しに動くことが影響している」(同記事より)という。
また、3月期決算の企業がこの時期に相次いで決算発表を行うが、市場の期待と企業業績のギャップ次第では、「売り」が加速しかねないのだ。4月30日の日本銀行の金融政策決定会合ではサプライズの追加金融緩和が期待されているが、肩透かしになった場合は、「売り」のトリガー(引き金)になるかもしれない。
6月にも大きな株価変動リスク
さらに、5月を乗り越えたとしても、6月も要注意だ。
「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/4月25日号)の特集『買っていい株 ダメな株』では、今年は6月が「決戦の月」になるという。6月5日にはウィーンでOPEC(石油輸出国機構)総会が開かれ、国際的なマネーフローに影響を与えるイベントになるかもしれない。
「今年6月の重要イベントで特に注目されるのは、米国が利上げに踏み切るかどうか。6月16~17日開催のFOMC(米国連邦公開市場委員会)で、利上げ決定という観測は後退しているが、そのシナリオがなくなったわけではない。今後発表される経済統計次第では、再浮上する可能性もある。利上げ観測が高まれば、世界的なリスクマネーの急縮小から米国株の波乱を招くことが警戒されている。逆に、日本株の相対的な魅力が見直される可能性もある」(同記事より)
また、6月からは東京証券取引所上場規則に「2名以上の社外取締役選任」などが記載された「コーポレートガバナンス・コード」(企業統治指針)が導入されることも波乱要素だ。
「週刊現代」は、相場格言「5月に売れ」には続きがあると説明している。「5月に売れ、しかし9月に戻ってくるのを忘れるな」といわれており、「5月の高値で利益確定してバカンスを楽しみ、欧米の新学期にあたる秋口に帰ってこい」(同記事より)という意味のようだ。今年の夏は暑くなるというが、はたしてどうなるか。
(文=小石川シンイチ)