所有者にとっては、「空き家を放置しておくより、貸したり建て替えたりしたほうがよさそうだ」ということになるだろう。これらの動きが、有効な空き家対策になるという期待が高まる一方で、新たな問題も浮上している。それが、固定資産税をはじめとする税金の過徴収問題だ。
14年6月には、埼玉県新座市の60代の夫婦が、27年間にわたって2倍以上の固定資産税を支払っていたことが発覚、過徴収問題がクローズアップされるきっかけとなった。固定資産税を払えなくなったこの夫婦は、住居を売却するまで追い込まれたが、不動産業者の指摘によって新座市の過徴収が発覚した。
これを受けて新座市が調査した結果、過去20年間で約3000件、金額にして3億2000万円もの過徴収が発覚した。「総務省は、地方自治体を管轄する省庁ではありますが、本来は各地方自治体のやることに口を出しません。しかし、この過徴収問題は深刻な事態と受け止め、総務省も動くことになりました」(総務省自治税務局固定資産税課)
新座市の過徴収問題は大きく報道され、総務大臣が全国の自治体に通達を出すという異例の事態にまで発展した。ほかの市町村でも調査が進み、固定資産税の過徴収が次々に発覚している。
固定資産税は、所有する家屋や土地などに対して課税されるものだが、増改築などで課税額が異なってくる。また、家屋は建築年数の経過とともに評価額が下がるため、増改築部分は別途に課税額を算出しなければならない。固定資産税は複雑かつ状況によって変化するため、以前の課税額のまま徴収されているということもあり得る。
「東日本大震災の影響で調査が正確にできなかった岩手県、宮城県、福島県と、総務省の調査を拒否した東京都を除き、13年の固定資産税額は全国で約8兆4890億円ありました。固定資産税は土地や家屋ごとに課税されますが、対象となる物件は国内に1億7000万筆以上もあります。中には、農地として申請されていながら駐車場だったケースもありますが、農地と駐車場では課税額が異なります。そのため、固定資産税の算定には、職員が現地に足を運んで調査することも珍しくありません」(同)
なぜ過徴収が発生してしまうのか
近年は、建築技術の発達や規制緩和が進んだことも、過徴収の要因と考えられている。
不動産業界では、土地の個数は「一筆、二筆」と数え、一筆ごとに地番が振られる。東京や大阪といった大都市部では、一軒家が建っていた大きな一筆の土地を3~4分筆し、分譲住宅を建てるといったケースが増えている。分割する筆数が増えることで、課税のミスが増える可能性も高まるというわけだ。