みなさんはスーパーマーケットやコンビニエンスストア、弁当店などで弁当を購入した後、どこでそれを食べますか?
会社に食堂があれば、そのテーブルに着いて食べるかもしれません。家庭であれば、食卓で食べるでしょう。食堂のテーブル、家庭の食卓は、お弁当を広げる前にテーブルの上を台拭きできれいに拭いてからお弁当を広げます。テーブルマットを敷いた上でお弁当を広げると華やかになります。
食堂がない事務所や、パソコンの画面を見ながらお弁当を食べる人は、普段事務作業を行っている事務机の上で、仕事から引き続いてお弁当を広げることになります。食事前に事務机の上を台拭きで拭く人は少数だと思います。
事務机の上には、ホチキス、クリップ、鉛筆、消しゴム、髪の毛など、たくさんの異物候補が散らばっています。お弁当のふたを開けた弾みで机の上にあったホチキスの針が飛んで、お弁当のご飯の上に乗ってしまっているかもしれません。割り箸袋を開けた時に、ビニール片がお弁当の上に飛ぶかもしれません。割り箸と一緒に入っている爪楊枝が飛んでおかずの上に落ちるかもしれません。お弁当のふたが割れて、かけらがご飯に入るかもしれないのです。
筆者は食品のクレーム対応をした経験がありますが、その頃にも蒸しプリンの中にビニール片が入っていたとのクレームで、ビニール片をよく確認したら、添付のスプーンの外袋だったという経験が何度もありました。また、お弁当から歯の詰め物などが出てきた場合のクレームは、ほとんどが食べている方自身の歯から外れたものでした。
お弁当工場でも注意が必要
お弁当やプリンなどのデザートを製造する場所では、異物が混入しないようにホチキス、クリップ、消しゴム、鉛筆等の事務用品を使用してはなりません。製造場所だけでなく、建物全体からそれらを排除すべきなのです。
工場で使用する手袋、製造過程で使用するビニール類も、製品に混入した場合にわかりやすいように製品の色と異なる色のついた物を使用すべきです。例えば、ご飯を詰める際に使用するビニールは透明ビニールではなく、混入したときに目立ちやすい青や赤といったビニールがよいでしょう。
そうすれば、万一異物混入のクレームがあった際、お客様が異物として示した物と同じ物が製造工場の建物内で使用されているかどうかが簡単に判別できます。また、工場の責任者は定期的に点検を実施して記録をつけておき、いつでも情報を公開できる体制を整えていることが必要です。
消費者のみなさんも、お弁当を食べる前に机の上を拭くことを心がけ、万一異物が入っていても、クレームをつける前に自分の不注意で混入させていないか確認いたしましょう。
(文=河岸宏和/食品安全教育研究所代表)