学校給食に関して、異物混入や、味がまずく残す生徒が多いといった報道が相次いでいます。
衛生管理が徹底された食品工場では、農薬・洗剤などの化学薬品が混入することはもちろん、金属検出機で検出できる大きさの金属異物が混入すること、弁当などが腐敗すること、小バエやゴキブリなどが混入することは、ありません。
一方、小さな異物、髪の毛に見えるものなどの混入を完全に防ぐことは難しいのも事実です。しかし、管理ができている食品工場では、小さな異物の混入率は「100万食当たり1件以下」に抑えられます。
取引開始前に、工場の出荷数全体におけるクレームの発生率を把握してから仕入れをしていれば、これほど多くのトラブルの発生は防げたはずです。
また、全体のクレーム発生率の次に仕入れを行う条件を明確にし、条件を満たしていなければ仕入れ開始までに改善を行わせるべきです。仕入れ条件のなかで、最低限クリアすべきものを設定していれば、毎日のようにクレームが発生するようなことはなかったはずです。
食品工場で行うべき異物混入対策
髪の毛などの混入を防ぐためには、作業着の管理が必要です。食品工場で着用する作業着の管理は、工場が行うべきです。農薬などの化学薬品の混入を防ぐためにも、工場内で使用する作業着を従業員に持ち帰らせるべきではありません。工場で管理し、洗濯も行い、その洗濯回数によって新品と交換すべきです。
さらに、作業着を入れるロッカーと、私服を入れるロッカーは別にすることが必要です。通勤で着用する私服を作業着の下に着用したり、自前の防寒具を身につけることも、毛糸など異物混入の可能性を避けるために制限すべきです。
毛髪混入防止のためには、髪の毛のまとめ方のルールが必要です。髪の毛は帽子を着用する前に、垂れてこないようにヘアピンなどを使用してまとめます。髪の毛の落下を防ぐ電着帽を使用している場合でも、髪の毛をきちんとまとめるルールを設定し、その上で確認を徹底することが不可欠です。
従業員全員について、帽子着用前の状態を写真に撮り、ルール通りできているか確認をします。帽子や作業着を着用したあと、全身に粘着テープのローラーを転がし、ホコリなどを除去します。ローラーは、ラジオ体操のように全員が同じ動きで全身にかけられるように方法を決め、教育します。ローラーをかける時間は、最低45秒以上必要です。
工場入場前に、眉毛やまつげは粘着シールで何度か拭き取るようにします。もちろん、つけまつげなどの使用は禁止です。手袋をはめてもはみ出る場所の腕毛などは、常に処理することが必要です。腋毛が作業着に触れないように、下着はランニングシャツ状のものではなく、Tシャツ状のものを着用するルールが必要です。作業着は、すね毛や腋毛などが工場内で落ちないように、袖口、足の口はゴム状で絞られている形であるべきです。
工場によっては、作業場の入場口にエアーシャワーが設置されています。エアーシャワーを使用する場合は、毎日フィルターの清掃を行っていないと、かえって埃を付着させてしまう場合があります。エアーシャワー通過後、再度粘着ローラーで作業着全体を転がし、異物を取り除きます。
作業開始前に、作業者の作業着や帽子の着用状況を点検することで、毛髪混入を防ぐことができます。作業中に作業着が乱れる場合があるので、定期的に作業着の状況を点検することも重要です。
トイレ、食事など、作業場から出入りする際にも、同じようにローラー掛けを行う必要があります。
学校給食では、仕入れる前に、その工場の従業員の出勤状況、作業場への入場状況のルールなどを確認し、実際の様子もチェックすれば、毛髪混入などが続く事態は防げたはずです。
(文=河岸宏和/食品安全教育研究所代表)