これがDCであれば、購入時の手数料は無料。毎年かかる信託報酬も、インデックスファンドでは各社0.5%前後の品揃えが豊富です。分配金や売却益が出たとしても、全額非課税で再投資できます。
加入期間は最低10年ですので、10年以上加入すれば60歳から受け取れます。受取時は、一括で受け取る一時金方式か、年金方式、あるいはその併用から選べます。一時金方式なら退職所得控除、年金方式なら公的年金等控除の適用を受けることができます。民間保険の満期返戻金が一時所得や雑所得扱いとなるのと比べても優遇されています。
企業側にも大きなメリット
これは個人だけでなく、企業経営者にも大きなメリットがあります。DCには個人型と企業型があり、後者は企業が導入します。そして企業型は、希望者が加入する財形年金のような任意加入の制度設計が可能です。加入を希望する従業員については給与の一部を会社が企業型で拠出すれば、会社が支給する給与の月額報酬・日額報酬が下がります。
すると企業型に加入した従業員の厚生年金や健康保険の等級が下がり、折半負担する会社の社会保険料も軽減されます。さらに企業が払い込む掛け金は、全額損金計上が可能です。つまり、従業員の老後資金を確保するという福利厚生制度の充実と、社会保険料負担の削減、法人税の削減が両立できるというわけです。中小零細企業では従業員の退職金制度を整備するのは大変ですが、この制度を利用すれば退職金代わりになります。
大企業であっても、確定給付型年金(企業年金)の運用継続が厳しくなっていて、減額や廃止するところも出てきています。そこで、積立も運用も従業員個々の責任に任せるという制度は魅力的なはず。
企業型DCは中退共(中小企業退職金共済)との併用もできますし(中退共は企業年金制度に該当しないため)、仮に従業員が途中で退職や転職をしても、自分の掛け金は持ち運ぶことができるので、誰にも損はありません。ただし、投資信託などの金融商品を自分で選んで自分で運用しますから、本人の判断によっては目減りするリスクがあります。
また、定期預金や保険商品を使えば老後は積み立てたお金がほぼ全額戻ってきますが、インフレ時には実質的に目減りすることになります。とはいえ、仮に運用で利益が出なくても、節税分だけは確実にメリットとなります。個人型にしても企業型にしても、景気に左右されることもなく、株価や為替とは無関係です。
このように目を皿のようにして「DCをやらない理由」を探しても見つからない。これはフル活用する価値があるのではないでしょうか。