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荻原博子「家庭のお金のホントとウソ」~新型コロナで収入が減ったら、何をすべきか~【住宅ローン編】

住宅ローンの返済が苦しい時の3つの方法…ボーナス払い見直しで貯蓄→繰上返済も可能に

文=荻原博子/経済ジャーナリスト
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「gettyimages」より

 今、新型コロナウイルスの影響で収入や給料が減ってしまい、住宅ローンの返済に苦慮する人が増えています。住宅ローンが払えなくなって金融機関に相談すると、主に3つの方法を提示されます。それは、以下のような内容です。

1.返済期間を延ばす

2.一定期間だけ、返済額を減らす

3.ボーナス返済を見直す

 本当に大変な状況にある場合は、1と2を組み合わせて、返済のスケジュールを組み直してくれるケースもあります。そこで、この3つの方法について見てみましょう。

返済期間を延ばすと住宅ローンの総額は増える

「返済期間を延ばす」というのは、文字通り、今の返済期間をさらに先延ばししてもらうことです。今までは順調に返済していたけれど、新型コロナの影響で給料が減って、今までの金額では返せなくなってしまったという場合に、住宅ローンの返済の終わりを延ばしてもらう。返済スケジュールを組み直してもらう、いわゆるリスケ(リスケジュール)が行われます。

 具体例で見てみましょう。たとえば、10年前に30歳で、金利1.5%、3000万円、返済期間35年の住宅ローンを借りたとします。月々の返済額は9万1855円(ボーナス払いなし)。ところが、収入が減って月々約9万円を支払うのが大変になったとします。この場合、残っている住宅ローンの返済期間は25年ですが、この期間を延ばしてもらうのです。通常は当初契約した35年までの間ということになります(交渉次第ではありますが)から、残りの25年返済を35年返済まで延ばした場合を考えてみましょう。

(現状)
残り25年で返す → 月の返済額は9万1855円

(返済期間を10年延ばす)
35年に延ばす → 月の返済額は7万330円

 つまり、返済期間を10年延ばしたことで、月々の返済額は約2万円(2万1525円)少なくなります。

 ただ、この方法には、主に2つのデメリットもあります。ひとつ目は、家計的には確かに楽になりますが、その代わり、65歳には完済するはずの住宅ローンを75歳まで払い続けなくてはなりません。2つ目は、年数が長くなるぶん総返済額が増えます。前述したケースでは、200万円ほど返済額が増えることになります。

返済期間延長で生じるデメリットの対処法

 返済期間を延ばすと、そのぶん返済総額は増えるし、年金をもらう年齢になっても住宅ローンを支払わなくてはならないというケースも出てきます。こうした状況に対処するには、2つの対策が考えられます。

 ひとつ目は、コロナ禍が収まって、給料も減らずに済みそうなら、再度スケジュールの組み直しをしてもらい、返済期間を元に戻してもらうこと。これをすると、月々の返済額はまた増えますが、前に戻ったと思えばなんとかやっていけるでしょう。

 2つ目は、積極的に繰り上げ返済をすること。コロナ禍では、手元に現金がなければ不安です。ですから、手元にある預金を取り崩して住宅ローンの繰り上げ返済に回すということも、なかなかしにくいでしょう。ただ、こうした危機が去って、収入も以前のような状況に戻れば、貯金もある程度までは取り崩すことができます。そのとき、真っ先にしたいのは借金の返済です。借金は金利の高いキャッシングなどから返済していくべきですが、余裕があったら住宅ローンも繰り上げ返済しておいたほうがいいでしょう。

 たとえば、前述の金利1.5%、3000万円の住宅ローンを借りて、10年目に返済をさらに10年間延ばしてもらったケースだと、コロナが去って1年後に100万円を繰り上げ返済すると、約2年間、返済期間が短縮されます。こうして繰り上げ返済を繰り返せば、元の65歳まで返済期間を短縮することもできるでしょう。

期間限定で減額すると、その後の支払いは増える

 2番目の「一定期間だけ、返済額を減らす」というのは、収入の目減りが一過性のものなら、その期間だけ返済額を返せる額に下げてもらうということです。ただし、一定期間の支払いをゼロにしてくれるという金融機関はほとんどないと思います。支払額を現状の半額にするとか、最低でも、その間は元金ではなく利息のみの支払いになるというところが多いようです。

 具体例で見てみましょう。たとえば、前述の10年前に30歳で金利1.5%、3000万円、返済期間35年の住宅ローンを借りた人の場合、月々の返済額は9万1855円(ボーナス払いなし)です。この人が、1年間は元金を払わないで利息だけ払うとした場合には、どうなるのでしょうか。

・通常の支払い額 → 月9万1855円

・1年間、利息のみの支払い額 → 約2万9000円(元金約6万3000円は後で払う)

 1年間は住宅ローンの支払い額が利息のみの約2万9000円になり、その間払わなかった元金の6万3000円×12カ月=75万6000円は、その後に支払う住宅ローンの年数24年間に組み込まれます。この場合、以降の返済額は従来の月9万1855円に約2600円を上乗せした額になり、これを65歳まで支払っていくことになります。

ボーナス払いをなくして月々の返済を増やす手も

 3つ目の「ボーナス返済を見直す」について、見てみましょう。会社が給料の支払い額を減らすときには、基本給の減額は一番後になります。最初に減らされるのがボーナスです。ですから、ボーナスはプラスαと考えて、もらえたら貯金するくらいのスタンスでいられるといいのですが、そういうご家庭はなかなかないのではないかと思います。

 特に、住宅ローンではボーナス併用払いが多く、半数以上の方が採用しています。銀行で住宅ローンを組むときに「月々7万円、ボーナス払い30万円」なら返せますか? と聞かれると、それならなんとなく払えそうな気がする人が多いようです。

 ただ、実際に支払いが始まると、月々の返済は7万円でも、ボーナス月は月々の7万円とボーナスの30万円を合わせて支払わなくてはならないので、支払額は37万円となります。30万円支払えばいいと思っていたのに37万円も支払わなくてはならないのですから、かなりの負担です。しかも、ボーナスカットになってしまうと、この額は払えません。ですから、なるべくボーナス払いを減らしておくということが、家計の危機管理上も必要となってきます。

「ボーナス払いをなくして月々の支払い額を増やす」というのは、年間の支払い額の配分を直せばいいだけなので、金融機関も簡単に応じてくれます。具体的には、どのようになるのでしょうか。

 金利1.5%、3000万円、返済期間35年の住宅ローンを借りた場合で、ボーナス払いをゼロにした場合、500万円をボーナス払いにした場合、1000万円をボーナス払いにした場合で見てみましょう。

(ボーナス払いをゼロの場合)
月々の返済額は9万1855円

(2500万円を月々返済、500万円をボーナス返済にした場合)
月々の返済額は7万6546円
ボーナス月の返済額は16万8619円(うちボーナス加算は9万2073円)

(2000万円を月々返済、1000万円をボーナス返済にした場合)
月々の返済額は6万1236円
ボーナス月の返済額は24万5382円(うちボーナス加算は18万4146円)

 ボーナス払いをやめれば、そのぶん月々の住宅ローンの支払い額は増えます。ただ、それでもなんとか家計が回るように無駄を省いてコストダウンしておけば、ボーナスカットでそれほどあわてることはなくなるかもしれません(家計のコストダウンの方法は、別途記述します)。

 また、住宅ローンのボーナス払いがないと、ボーナスから貯金をするということもできます。その貯金を住宅ローンの繰り上げ返済に回せば、ますます安心感が高まります。ボーナス併用払いを使っている人は、早めに考えておいたほうがいいでしょう。

(文=荻原博子/経済ジャーナリスト)

荻原博子/経済ジャーナリスト

荻原博子/経済ジャーナリスト

大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。

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