筆者が、よく聞かれる質問があります。それは「自分は、どれくらいお金を貯めたらいいのか?」ということです。「みんなはどれくらい貯めているんだろう」「うちは標準より上なのか、下なのか」というのは、気になるものですよね。
まわりが気になるという気持ちは、少しさかのぼりますが、学生時代に受けた“模試”も影響しているのかもしれません。「同じ問題を解く」という一律条件のもと、「偏差値40」「偏差値50」「偏差値60」という結果が出ます。この数値から、自分は「下のほうだな」「真ん中だな」「上のほうだな」などと読み取ることができます。志望校を書くと、「A判定」「E判定」などと出て、合格できそうか厳しそうか、という目安もわかりますよね。
ところが、お金はそううまくはいきません。条件も、将来の方向性も、人によってあまりに異なるからです。例えば、同じ会社に入った新卒社員のAさんとBさんがいたとします。最初は、同じお給料ですよね。ところが、それ以外の条件や将来の方向性が異なります。
●Aさん……実家暮らしで貯蓄は0円。お給料は全部使ってしまうタイプ。会社にずっと勤めるつもりで、結婚はすぐにでもしたいと思っている。
●Bさん……一人暮らし。学生時代のアルバイトで、貯蓄がすでに100万円ある。さらに、財形貯蓄で毎月3万円を貯めることにした。結婚の予定はないが、20代のうちに独立して会社を起こしたいと考えている。
いかがでしょうか。Aさんのように結婚をすぐにしたいのなら、それに向けて資金を貯める必要があります。結婚して家計が複雑になる前、独身のうちに“貯める習慣”を身につけておきたいものです。また、実家暮らしならお金が貯まりやすいので、一人暮らしの人よりも月々多めに貯めていきたいですね。
将来、独立したいと考えているBさんの場合、起業資金などとして、多めに貯蓄をしておく必要があるでしょう。ただ、しっかり毎月3万円を貯める計画を立てている点は安心ですね。
このように、すでにある貯蓄のほか、「一人暮らしか、実家暮らしか」「お給料を使いきってしまうタイプか、そうでないか」「会社にずっと勤める予定か、独立したいと考えているのか」などの事情により、お金の動きは大きく異なるのです。