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松崎のり子「誰が貯めに金は成る」

飲食店や金融機関で「おすすめ」「おまかせ」を聞くのは損?店側の「カモ」になる危険も

文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト

金融機関で「おすすめは?」はNGワード!

 レストランのメニューや家電ならともかく、ややこしいのは、金融機関の担当者にこの「おすすめ」を聞いてしまうことだ。ここには、2つの落とし穴がある。

 ひとつは、前述したように「誰にメリットがあるおすすめか」ということ。もうひとつは、「相手は、自分が販売できないものはおすすめしない」ということだ。

 たとえば、保険ショップに行って「預金よりもお金が増えそうな方法はないですか」と相談すれば、相手がおすすめしてくれるのは、もれなく保険商品だろう。「住宅ローンの繰り上げ返済に回せば、もっと得ですよ」とは絶対に言わない。

 銀行に行って相談しても、「うちよりB銀行さんが扱っている投資信託のほうが、手数料が安くていいんですよ」とは口が裂けても言わない。

 金融広報中央委員会がまとめた「行動経済学の金融教育への応用の重要性」(平成24年3月)には、こんな一説がある(以下、引用)。

「行動経済学では、消費者が意思決定を行う際に生ずる、規則性のある判断の偏り(バイアス)を『行動バイアス』と呼ぶことが多い。最近の研究によれば、行動バイアスは、下記の四つの条件が揃うと発生しやすくなることが判明している。

(1)意思決定に複雑な情報処理を伴う場合
(2)意思決定にリスクや不確実性が伴う場合
(3)意思決定の結果が現在と将来の利益の双方に影響を及ぼす場合
(4)意思決定により何らかの見返りが期待できる場合

消費者が貯蓄・投資など金融取引を行う際の意思決定環境は、まさに上記4条件全てに合致しやすい傾向がみられ、金融行動と行動バイアスの間に密接な関係があることがわかる」

 つまり、こと金融取引を行う時の選択は、消費者側に難しい選択を迫るということだ。

 金融商品の複雑な仕組みを理解し、しかもリスク商品の場合は「損をするかもしれない」という不確実性を覚悟し、しかし、できれば大きな利益を得るような選択をしたいと願う。まさに、多くの場合はここで思考停止し、「おすすめは?」となる。

 相手も商売なので、儲かる商品を売りたいし、販売ノルマもある。支店の売り上げも大事だ。しかし、自分の知識では選択できないような複雑な金融商品は、おおむね手数料が高く、中途解約しにくいものもある。理解できないものは選ばないという勇気も必要だろう。

松崎のり子/消費経済ジャーナリスト

松崎のり子/消費経済ジャーナリスト

消費経済ジャーナリスト。生活情報誌等の雑誌編集者として20年以上、マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析した経験から、貯蓄成功のポイントは貯め方よりお金の使い方にあるとの視点で、貯蓄・節約アドバイスを行う。また、節約愛好家「激★やす子」のペンネームでも活躍中。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)。
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