九州を中心に大きな災害が発生しました。東北でも河川の氾濫が起きています。7月は比較的災害が発生しやすい時期ですが、近年はその規模も頻度も増大しているようです。今から秋の台風シーズンに備えておきたいものです。
災害の危険性は増大している
災害のニュースが増えているように感じます。地球温暖化の影響でしょうか、長い期間を比較すると、集中豪雨が起きる頻度は増える傾向にあります。気象庁の調査では、年間降水量はどちらかというと減少傾向なのですが、極端な多雨・少雨の年が増えているとのことです。洪水や土砂災害などの災害は集中豪雨で発生しますので、災害の危険性は高まっているといえるでしょう。
しかし、それに対して自然災害を防ぐための備えが拡充されているかといえば、そうともいえません。国の治水予算は、「脱ダム宣言」の民主党政権時代から比べると増えてはいますが、それでもかつての1990年代と比べると減少しています。国の財政赤字が増大しており、もはやかつてのような大規模な公共投資は望めないでしょう。
損害保険の保険金支払いは近年、急増しています。損害保険協会によると、火災保険の支払いは、2010年までは年間1,000億円以内でしたが、2010年代に入ると毎年1,000億円を超えるようになり、2,000億円を超える年も出てきました。さらに2018年には約1兆3,500億円、2019年には約8,600億円と桁が変わる勢いで増えています。火災保険による保険金の支払いは、火災よりも自然災害によるものが多いので、このことからも自然災害による被害が増加していることがわかります。この保険金の支払いは、やがて保険料の値上げに反映されることになります。
平時の対策と非常時の対策を
火災保険で自然災害による損害の補償を確保しておくことも大切ですが、それ以上に身を守る備えをしておくことは重要です。災害が発生すると、被害にあった地域が、ハザードマップで危険性が指摘されている部分と重なるとの指摘が少なくありません。皆さんは、お住いの地域のハザードマップをご覧になったことはあるでしょうか?
ハザードマップは、自治体が作成する「災害危険予測地図」です。災害が発生した場合の危険性の程度を地図上で表示しています。多くの自治体で、インターネットで見ることができるようになっています。「洪水ハザードマップ」「土砂災害ハザードマップ」などが多く作成されていますが、地域によっては津波、火山噴火、地震による液状化現象などもつくられています。
今住んでいるご自宅の危険性を把握しておくのはもちろんですが、自宅の購入など住み替えを検討する際にも確認しておきたいものです。不動産の取引では、交通の便ばかりが重視され、災害の危険性についてはほとんど認識されていません。ハザードマップでの危険性については、不動産売買や賃貸契約の際にも説明されませんので、自分で調べて確認しておく必要があります。
そして、天気予報などで災害の危険性に言及があった際には、インターネットで気象庁の「大雨・洪水警報の危険度分布」を見るようにしましょう。「土砂災害」「浸水害」「洪水」の危険性と、「雨の様子」が地図上に表示されます。日本地図から、かなり詳細な地図まで拡大できますので、自宅周辺から、遠い親戚の近隣状況まで、今現在の状況を見ることができます。
「洪水警報の危険度分布」ではかなり小さい河川まで危険性が色分けで表示されます。最近ではニュースでも表示されることが多く、一度は目にしたことがあると思いますが、いつでも知りたい場所の状況を確認できることを知らない人は少なくありません。
普段から自治体のハザードマップを確認しておき、いざ災害の危険性が生じた際には気象庁の「大雨・洪水警報の危険度分布」を見て、早めの避難を心掛ける。自然災害から身を守るのは、平時と非常時の両方の対策が重要です。
(文=村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー)