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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

もし妻や夫が「がん」になったら、あなたは具体的にどうすべきか?精神面、実生活、お金…

文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー

 がん罹患者の家族が「第二の患者」とも呼ばれるように、患者本人だけでなく、その家族へも精神的・身体的負担がかかってくる。家族は、とにかく日々、患者を支えるのに精一杯。自分のことまで考える余裕がなく、体調を崩す家族も少なくない。

 そもそも、夫婦それぞれで役割は異なるし、お互いに期待するものが同じとは限らない。相手が良かれと思ってやっていることが、そうではなかったり、それに対して反応が薄かったりして「せっかく、やっているのに」と逆切れされてもかなわない。

 医療機関から配布される冊子には「家族は、患者さんが本当に望んでいることは何かを良く聞いて理解し、何ができるかを考えてみましょう」などと書いてあるが、患者本人が「自分がどうしたいかなんてわからない」場合もあるだろう。それにこれまで、人の話などマトモに聞いてくれなかった夫が、急にあれこれ聞いてくるのもなんだか気味が悪い。

 だから、治療がひと段落すれば、妙に気構えたりせず、これまで通り接してくれるのが、一番ありがたいというのが正直なところだ。

 ただ可能なら、それにちょっとした配慮「+α」を加えるのがベストな対応である。

 たとえば、乳がんで乳房摘出術後は、重い物をなるべく持たないようにすべきであったり、腕を上げにくくなるので、洗濯物が干しづらくなったりする。

 普段どんなことが大変なのか、妻の話にちょこっと耳を傾け、罹患後にできなくなったことに対するサポートがあれば、とても喜ばれるのではないだろうか。

治療に専念するには経済的・社会的問題の解決は必須

 それに加えて、おカネや仕事に対する妻の不安を和らげることも大切である。

 がん患者が抱える問題として(1)身体的な問題(病気、治療法など)、(2)精神的な問題(不安感、焦燥感、恐怖感など)、(3)社会・経済的な問題(就労、結婚・出産、医療費など)の3つが挙げられる。

 この3つは、独立するものでなく、相互的に影響し合う。たとえば、「治療費が不足するのでは」という悩みが高じてくると、治療にも専念できないし、精神的にも不安定になりがちだ。

 一家の家計管理を妻が担っている場合も多い。自分の医療費等が家計を圧迫していることを不安に感じないよう、「治療費のことは心配しなくてもいいから、安心して治療に専念して」と一声かけてあげるのも良いだろう。

 そのためにも、妻がパートなどに出て、家計の一部を担っているようなら、イザという時の備えを保険や預貯金等で準備しておくべきである。

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

 1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)
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