もし妻や夫が「がん」になったら、あなたは具体的にどうすべきか?精神面、実生活、お金…
今後の見通しがつくまでは、安易に「仕事を辞めたら」と勧めない
また共働きの妻に対しては、安易に「がんになったのだから、仕事を辞めたら」などと決めつけないようにしてほしい。
がん患者の罹患後の退職の有無をみると、約2割の人が退職している。その理由として「家族から勧められたため」という理由が上がっている。
厚生労働省の研究事業の調査によると、仕事を辞めた患者の36%が「やむを得ない」と回答しているが、「継続したかった」と回答した人も27%いる。仕事は家計を支えるためのものであると同時に、生きがいでもあるからだ。たしかに治療と仕事の両立は大変かもしれない。状況によっては、仕事どころではない患者もいるだろう。しかし、治療が大変だったときに、「仕事があるお蔭で気持ちが紛れた」、「自分が社会にとって必要とされていることを実感できた」などという患者も多い。
私自身も、告知直後に夫や家族から仕事を辞めるように言われたが、あの時辞めなくて本当に良かったと思っている。
夫自身も病気にならないように自分の体と向き合う
多くの人にとって、妻やパートナーががんになったことは、これまでの人生を振り返り、これからどんなふうに生きていきたいかを考えるきっかけになると思う。
人は困難な局面にぶつかったときにこそ、その人の本質が露呈するものだ。これによって夫婦の絆が強まる場合がある一方で、「がん離婚」に発展したり、DVに悩まされたりする場合も少なくない。
ある患者さんが「がん患者の夫が、小林麻央さんや北斗晶さんちみたいな優しい思いやり溢れるダンナばかりと勘違いされては困る」と憤っていた。さて、みなさんのパートナーはいかがだろうか。
そして、最後にひとこと。妻ががんに罹患したのであれば、夫も、自分の健康やカラダに向き合ってほしい。自分ががん患者になったことを残念に思う以上に、夫や子どももがんに罹患することを心配する妻は多い。ダブルでがんになれば、それだけ医療費の増大や収入減少は避けられない。
それを回避するためにも、生活習慣を見直す、がん検診を受ける、経済的備えをしておくなど、今できることに対してベストを尽くそう。
(文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー)