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牧野知弘「ニッポンの不動産の難点」

マンションも戸建て住宅も“テレワーク対応型”が常識に…「働く」「寛ぐ」両立の間取り

文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役
マンションも戸建て住宅も“テレワーク対応型”が常識に…「働く」「寛ぐ」両立の間取りの画像1
「Getty Images」より

 ポスト・コロナ時代の住まい方は、どのように変わっていくのだろうか。今後あたりまえになってくると予想されるテレワーク主体の働き方は、これまでの住宅のあり方にも大きな影響を及ぼしそうだ。

 コロナ禍において、テレワークを余儀なくされた多くの家庭で話題になったのが、仕事場所を家の中のどこに確保するのかという大命題だ。マンションなどのこれまでの商品企画は、ファミリータイプではだいたい3LDKが主体である。3つの部屋は夫婦の寝室と2人の子供部屋で占拠され、4LDKでも1部屋は和室でリビングの続きのような扱いになっているものが多かった。

 そんな窮屈な間取りの中に「働く」ためのスペースを確保するのは一苦労だ。大きなデスクや長時間座っていても疲れないチェアを置くスペースはほとんどないというのが実情だ。また夫婦ともテレワークになり、オンライン上で会議を行ったり、電話でのやりとりが行われる場合には同じダイニングテーブルで、一緒に働くのにも支障が生じる。部屋の一角に書斎コーナーをつくる手もあるが、ただでさえ家具や物が散乱する中では限界があるといわざるを得ない。

 これまでの住宅の商品企画には、平日は「寝る」を中心に、休日も「寛ぐ」といったコンセプトしか存在しなかった。ポスト・コロナ時代においてはこれに加えて「働く」というコンセプトが初めて登場することになる。

 おそらく今後の新築マンションでは、各住戸に書斎スペースを設けるなどの新しい間取りが生まれるはずだ。たとえば3LDKプラス書斎として夫婦2人用の個室仕様の部屋やスペースの確保などが考えられる。トイレや浴室のように個室にして防音環境などが整えられればベストだが、可動式の扉で覆うユニット書斎にする、など間取りにもいろいろな進化が生じるはずだ。

 またマンション内共用部にはテレワークスペースが確保されるようになるだろう。各住戸内で書斎スペースを確保するのは専有面積の限界もあって難しい。であるならばマンション共用部にあらかじめコワーキングスペースや個室を設けて、住民に貸し出すという企画が生まれてくる。マンションが「住む」だけの場から「働く」場にもなってくるのだ。

 たとえばタワーマンションなどの高層建築物になると地下深くまで杭を打ち込んでいる。そのため建物の地下には広大なスペースが生まれるが、地下ということもあって現実にはあまり利用されていない。このスペースをテレワーク用のフロアとして住民に提供することが考えられる。地下は光が入らないという難点があるが、逆に集中しやすい環境を作ることは可能だ。

 最近では液晶画面であたかも外の風景が本物のように見えるパネルなども開発されている。以前私も、家電メーカーのショールームで実際に見学したことがあるが、窓から見えるのは快晴のアルプス。まるで窓の外には心地よい風が吹いているかのような錯覚まで起こさせるほどの優れものだった。取り入れてみてもよいかもしれない。

駐車場スペースにコワーキング施設を設置

 ポスト・コロナ時代では、マンション住民の多くが朝、三々五々エレベーターに乗ってマンション共用部にあるコワーキング施設に出勤。そこで決められた時間執務することになるだろう。テレワークスペースの予約は管理組合にスマホで行い、組合からは予約された個室の鍵の暗証番号が送られる。またはスマートロックにして、スマホをかざして扉を開錠して中に入る。そんな風景がどのマンションでも共用部での日常となることだろう。

 今多くのマンション管理組合では、ライフスタイルの変化の影響で、駐車場収入が減少している。テレワークスペースを住民専用として貸し出して料金を取れば、組合にとって新たな収益源になるはずだ。

 すでに分譲されているマンションでも共用部に陳列されて、これまでほとんど使いもされずに放置されていた、高級なソファや家具を取り除いて、コワーキングスペースに改装するマンションが出てきそうだ。

 この場合は、たとえばユニットバスのようにパネルを組み合わせて2畳から4畳程度の書斎部屋を設け、このユニットを共用部に並べてみてはどうだろうか。各ユニットは防音のみならず、各種カメラを備え付けて、会社と結ぶ、あるいは中で働く人の集中力を維持、向上させる空調システムや体調管理、健康管理のための器具などを備え付け、集中して仕事ができる環境を提供するなどの工夫もこらすことができる。

 容積率や駐車場付置義務などのハードルはあるが、収入が低減している駐車場スペースにコワーキング施設を設置し、住民に利用してもらうことも検討できる。収益性をあげるためには、マンション内住民のみならず、周辺住民にも利用してもらうことも検討できるのではないだろうか。

コロナ禍の先に新しいマーケット

 戸建て住宅でも同様に「働く」というコンセプトが取り入れられるようになる。住宅内に寝室とは別にワーキングスペースが整えられるようになるだろう。戸建て住宅はマンションよりもスペースに余裕を持てるものも多いので、「働く」ための快適な装備はより充実したものにすることも可能だ。敷地や容積率に余裕があれば、増築する、敷地内に別棟を建てることもできる。

 また、これまでの住空間は、平日は「寝る」ための空間でしかなく、その象徴が、夫婦が同じ部屋で寝るというコンセプトだった。ポスト・コロナ時代においては夫婦がそれぞれの部屋を持ち、個室で仕事をする。リビングやダイニングがオフィスでいうところの共用部になり、夫婦や子供たちが寛ぐ場になるという明確な区切りがなされるようになるだろう。

 このように住宅が「働く」空間としても意識されるようになれば、住宅の間取りや共用部の考え方にも大きな変革が起こる。一日のあいだの大半をすごすことになると、従来の家の在り方は激変する。

「働く」だけではない。家の中での過ごし方にも変化がでてくる。つまり、自宅で寛ぐコンセプトとして自分の趣味のスペースを充実させたいというニーズが顕在化する。一日のあいだで通勤という無駄な時間が無くなる分、この時間帯を趣味の時間や寛ぐ時間に充当できるからだ。

 自宅で食事する機会が増えればキッチンの仕様をよくしたい、バーコーナーをつくって好きなワインやウイスキーをストックしたい、静かに音楽を聴きたい部屋が欲しいといった要望も出てくるだろう。住宅はよりオーダーメードなものに変わってくると思われる。これまでのような供給者側の勝手に描くコンセプトの押し付けでは通用しない時代になりそうだ。

 だが見方を変えれば、これは住宅業界にとっては新たなチャンスともいえる。人々にマインドシフトが起こり、多くの時間を家の中で過ごすようになることは、そうしたライフスタイルに対応をした新たな住宅を供給するチャンスが生まれるからだ。

 さらに今後シェリングエコノミーを活用し、例えば車や自転車のみならず季節家電や衣服などを街の中でシェアリングするようになれば、住宅の間取りもずいぶん変わってくるだろう。

 コロナ禍を嘆くだけでは未来は開けない。コロナ禍の先に新しいマーケットが広がっているのである。

(文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役)

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

オラガ総研代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にも関わり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みに応える。
オラガ総研株式会社

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