女性の「定年」、社会問題化…自身が定年で困惑、夫の定年でまとわりつかれ心身不調も
「夫の定年」問題
さらに「定年」は決して働いている女性だけの問題ではなく、専業主婦だった人にとっても大きな問題です。それは「夫の定年」が家庭にもたらす変化が大きいからです。夫が仕事で家にいない期間が何十年も続くと、妻はそれなりに自分のコミュニティや交友関係をつくって活動していきます。
ところが夫が定年を迎えて働くのを辞め、家にずっといるようになると、そのバランスが壊れてくるからです。ましてやひとりでは何もできない夫にまとわりつかれてしまうと、妻のストレスは高まり、心身ともに悪化してしまうということにもなりかねません。最近よくいわれる「夫源病」という現象です。つまり、仕事を持たない専業主婦にとっても「定年」というのは、そこからの人生にとって一大事だといえるのです。
最近、私は社会保険労務士でファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんと一緒に『定年男子 定年女子 45歳から始める「金持ち老後」入門!』(日経BP社)という本を上梓しました。これは昨年1月から1年間続けてきたセミナーの内容を本にしたものです。このセミナーの目的は男性からの視点だけではなく、女性にとっての定年ということも併せて考えてみようということでしたが、予想通り、セミナーに参加された方のほとんどは女性の方々でした。
定年後のことを本当に考えなければならないのは、男性よりもむしろ女性のほうかもしれません。なぜなら女性のほうが長生きしますし、仮に現在が独身であっても結婚していたとしても、女性は最後は夫を看取ってひとりになる確率が高いからです。
また、介護にしても男性は自分の親の介護だけを気にかけていればいいのでしょうが、女性の場合は3回介護があるといいます。親の介護、夫の介護、そして最後はひとりになった自分の介護の問題です。このように考えていくと、「定年」というのは男性よりもむしろ女性にとっての影響のほうがはるかに大きいのかもしれません。
女性が活躍する社会が訪れるということは、また同時に「女性にとっての定年後の働き方や生活の仕方」を考えなければならない時期にきているともいえるのではないでしょうか。
(文=大江英樹/オフィス・リベルタス代表)