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三浦春馬さん逝去で考える…疎遠な親族に突然、多額の遺産相続発生、問題と対処法の知識

文=A4studio
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三浦春馬さん

 2020年7月18日、人気俳優の三浦春馬さんが自ら命を絶ち、その一報は日本中に大きな衝撃を与えた。死から早数カ月が経ったが、生前の三浦さんは親類縁者と疎遠だったために多額の遺産の処分をめぐり問題が生じているという一部報道もみられる。

 そこで今回は、遺産相続に関する相談をいくつも請け負ってきた山岸純法律事務所の山岸純弁護士と、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表の鬼塚眞子氏に話を聞いた。

山岸弁護士の見解:清濁併せ持つ“遺産相続”について

 まずは、山岸氏に遺産とはどういうものなのかについて聞いた。

「遺産とは故人が亡くなる時点で持っていた“客観的な経済的価値がある財産”を意味します。つまり着古した衣服、手紙や文房具、故人にとっては価値のあった記念品などは、客観的に見ると経済的価値はほぼないので“遺産”とは見なされず、故人と親しかった人などに相続人が贈呈する“形見分け”という形になります。

 遺産の判定に関してさらにいうと、相続人が『価値がないのでいらない』と言ったとしても、現在フリマアプリなどで高額取引されているような物品であった場合は、遺産と見なされるケースがあります。

 次に遺産の種類ですが、これは2つ種類があります。1つ目は、現金・貴金属・骨董品・預貯金・特許権・著作権・不動産といった、相続人にとってプラスの存在となる“積極財産”です。2つ目は、借金・分割ローン・他人の借金の保証といった、相続人にとってマイナスとなる“消極財産”です。遺産というとプラスなイメージばかり先行しますが、現実には清濁合わせて遺産なのです」(山岸氏)

 必ずしも得するわけではないからこそ、遺産相続は複雑な問題をはらんでいるのかもしれない。加えて、山岸氏に一般的な遺産相続の流れについてもおさらいしてもらった。

「大前提として、被相続人(故人)による遺言書が残されていれば、その遺志を尊重した遺産分割が行われますし、その遺言書に遺言執行者が明記されていれば、相続人はその人が実施する遺産の分割手続きに従わなければなりません。つまり、法の許す範囲ではありますが、最大の力を持つのは“故人の言葉”なのです。

 次に遺言書が残されていない場合ですが、これは2つの選択肢があります。1つ目は、法定相続分に従って分割する方法。例えば妻と子供が2人いる家庭の夫が亡くなったとき、妻に2分の1、子供にそれぞれ4分の1の財産がいくなど、分割の割合は法律で定められているんです。2つ目は、遺産分割協議といって遺族間の話し合いで決める場合です。ですが、この話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所で調停委員の意見を踏まえつつ調停手続きを行うことになり、それでもダメならば、審判手続きにより裁判所に判断してもらうことになります」(山岸氏)

 優先されるべきは“故人の遺志”というわけだが、それでもまとまらないときは司法のジャッジが下るということか。では、被相続人と親類縁者が疎遠な場合の相続については、どうなるのか。

「相続人の権利は、まず、故人の配偶者と子、次に兄弟姉妹という順に割り当てられるわけですが、“親類縁者と疎遠な場合”というのは、言い換えるとおおむね“配偶者も親も子もおらず、兄弟姉妹も先に亡くなっている場合”となります。このような場合は“兄弟姉妹の子ども”、要するに“甥や姪”が相続人と判断されます。また、故人に配偶者も子もおらず、両親が離婚しており共に暮らしていなかった場合も“親類縁者と疎遠な場合”といえますが、こういう場合は、故人との親密度に関係なく、相続権は第2順位の親になります」(山岸氏)

 ちなみに、有名人の逝去などでは、よく「疎遠な親族ではなく、親しい友人が相続できないのか?」という声も挙がるが、山岸氏曰く「ほぼ不可能な要求」なのだそうだ。

鬼塚氏の見解:“保険トラブル”について

 では次に、遺産のなかでも大きな割合を占めることが多い保険とはどういう存在なのだろうか。鬼塚氏に聞いた。

「まず、遺産相続の場面での保険は死亡保険となるわけですが、この要となるのは受取人、つまり保険が支払われる相手です。受取人は、保険の契約者(故人)の原則2親等以内である親か子になります。また、死亡保険は遺産のなかでも少々特殊で、例えば故人に多額の消極財産があるなどで相続放棄した場合でも、そうした意思とは関係なく、受取人に支払われるシステムになっています。また、受取人がたとえ多額の借金などを背負っていて、社会的な信用度が低くなっていたとしても、保険は受取人になっていれば支払われます。こういった背景があるため、“なんであいつにこんな保険額が支払われるんだ!”といったような親類縁者との間でトラブルの原因になりがちなのです」(鬼塚氏)

 鬼塚氏によると、他の遺産との違いはほかにもあるという。

「死亡保険が特殊なところは、先ほど受取人は“契約者の原則2親等以内”と言いましたが、他の遺産と違い、故人が親類縁者と疎遠だったという場合や、両親から虐待を受けていたといった場合、2親等以外、つまり故人と親しい第三者でも受け取れるところです。もちろん契約者が申請書を提出し、保険会社による譲渡先の調査などを経る必要はあります」(鬼塚氏)

 他の遺産とは異なるルールがあるからこそ、保険は遺産相続のなかで大きな役割を担うと呼ばれることが多いのだろうか。

生前から“どうしておきたいか”を考えておくことが大切

 最後に、山岸氏と鬼塚氏に、遺産を残す側の本人がしておくべきことについて聞いた。

「死はいつ訪れるかわからないものです。ですから本人が“自分が死んだ後どうしておきたいか”を普段から明確に考え、可能な限り書面で残しておくことでしょう。書面の全文と日付、そして氏名を自ら執筆し、押印しておけば、基本的には遺言書として機能しますし、このような要件を厳格に具備していなくても、故人の遺志を図る何らかの手掛かりとなりますからね」(山岸氏)

「保険に関していえば、受取人を誰にするのか、考え直すタイミングを見逃さないことです。生前に認知症と診断されていない、つまり判断能力に問題がないならば契約後の受取人の変更は可能です。関係性の変化を放置しないこと、そしてその契約書がどこにあるか生前誰かに伝えておくことが大切でしょう」(鬼塚氏)

 自らが及ぼす影響は、その死後も生まれるもの。“終活”が話題になることも多くなっていた昨今だけに、生きている間からそのことについて意識を強く持っておくことも必要なのかもしれない。

(文=A4studio)

A4studio

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
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Twitter:@a4studio_tokyo

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