元国税局職員、さんきゅう倉田です。好きな銀行は「日本銀行」です。
相続財産を圧縮するために、基礎控除「110万円」以内で生前贈与をする方はたくさんいらっしゃいます。ただ、贈与したお金を配偶者や子供に渡さずに、自分で管理している方が散見されます。講演会などで年配の方に話を聞くと、平然と「自分もそうだ」とおっしゃる方もいます。理由を聞くと、「将来のために与えているので、今すぐに使わないように」「あくまで“困ったときのお金”であって、生活費として使うには不適切」といった意見がありました。
一言、「使うなよ」と言えばいいのにと思います。家族といえども、なかなか信用できないものですね。
生前に、贈与のつもりで妻と子供の口座に振り込み続けたお金が、亡くなった後、相続財産であるとされた事例がありました。
ある家族に、相続税の税務調査が行われました。相続税の調査ではあらかじめ、亡くなった方やその家族の預金口座を調べています。そのなかに、亡くなった方(以下、父親)の妻名義と子供名義で、毎年一定の金額が入金されている口座がありました。
ただし、入金はされているけれど、これ以外に入出金はありません。名前は妻や子供ですが、実際は父親が管理する、“名義預金”の可能性があります。名義預金なら、贈与があったとはいえません。
妻に話を聞くと、「相続財産でも贈与財産でもなく、自分のお金である」と主張しました。結婚前から貯金をし、結婚後も生活費を上手にやりくりしてつくったへそくりを入金しているとの説明です。
また、子供の貯金は、お年玉や親戚からお祝いとしてもらったお金で、さらに社会人になってから毎月の生活費として家計に入れていた3万円であると言います。ただし、その銀行口座の開設、入金、管理は子供ではなく妻が行っており、父親はまったく関係ないとのことでした。