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さんきゅう倉田「税務調査の与太話」

妻や子ども名義の口座に毎年生前贈与→税務調査で「相続財産」と見なされ追徴課税!

文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人
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名義預金として相続財産に

 しかし、調査担当者が、父親の書いた「預金口座メモ」を見つけたことで、預金は父親が管理していた可能性が高まりました。預金口座メモには、妻や子供の預金残高と、それを合計した金額が書かれ、預金全体を把握、掌握していた様子がうかがわれます。

 通常、個人個人が預金を管理するのなら、互いに預金額を知らせることはなく、またそれを同一のメモ書きに記す必要はありません。さらに、それの合計額を記載した事実は、預金全体を総合的に把握・管理する意図が見受けられます。このメモは、調査を受ける側にとって、かなり不利な証拠といえるでしょう。

 しかし、妻はあきらめませんでした。預金口座メモは、銀行が父親と妻に家族全員の残高を知らせた際に、ふたりで書いたものであると主張しました。さらに、預金通帳は、自分は寝室のタンスの中で、父親は書斎の引き出しの中で、自己の責任において独立して管理していたそうです。

「メモをふたりで書いた」というのは、どういうことなのでしょうか。同じ紙に複数人が、簡単な数字の羅列を書く状況が想像しにくく、疑わしい。管理する場所についても、証拠がないので、なんとでも言えるでしょう。

 調査担当者が確認を進めていくと、以下の事実が明らかになりました。

 妻の預金は、収入やへそくりが原資であるとのことでしたが、妻の給与やへそくり相当額を合計しても、預金の金額には到底至らず、父親の資産が含まれている可能性が高い。また、子供が生活費を入れていたというのは、本人と家族がそう発言するのみであり、客観的な証拠はない。

 こういった事実を踏まえ、妻や子供の名義の預金は名義預金であり、父親の相続財産であるとされてしまいました。その結果、これらの預金も相続税の対象となり、追徴課税が課されることになったのです。

 家族に口座をつくらせて、そこに入金し、贈与があったように取り繕って満足感を得て、「自分はなんて良い父親なんだ」と考える方は、大勢いらっしゃいます。父親としては気分が良くとも、相続のときに困るのは残された家族です。余計な手間と税務調査のストレス、追徴課税を考えたら、粗忽な手段を取るのは良い選択とはいえません。

(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)

さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

大学卒業後、国税専門官試験を受けて合格し国税庁職員として東京国税局に入庁。法人税の調査などを行った。退職後、NSC東京校に入学し、現在お笑い芸人として活躍中。著書に『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』(総合法令出版)、『お金持ちがしない42のこと』(Kindle版)がある。
さんきゅう倉田公式ホームページ

Twitter:@thankyoukurata

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